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金融の明大、“面倒見”の金沢工大…高校教諭が選ぶ「就職に力を入れている大学」ランキング

入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。

就職に力を入れている大学は?
就職に力を入れている大学は?

 筆者が常務を務める大学通信は毎年、全国の進学校2000校にアンケートを行っています。今年は739校から回答があり、項目別に進路指導教諭におすすめの大学を挙げてもらっています。その中で「就職に力を入れている大学」はどこかを聞きました。学生の就職活動支援に力を入れていると思う大学を5校連記で記入してもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント…として計算し、集計しています。上位に入った大学を紹介しましょう。

有名企業に強い明治大学

「就職に力を入れている大学」上位10大学
「就職に力を入れている大学」上位10大学

 トップは12年連続で明治大学です。学生の就職活動支援に力を入れていることで知られます。高校の進路指導教諭からも「キャリアサポートの充実」を挙げる声が多く出ました。特にコロナ禍の昨年、今年の就活はキャリアセンターの力量が問われました。

 また、明治大学は有名企業に強いのも特徴です。今年の就職先企業を見ますと、多い順に明治安田生命保険と楽天グループ各38人、(住友商事の情報システム部門が独立した)SCSK32人、NEC31人、あいおいニッセイ同和損害保険と三井住友銀行各27人などでした。金融に強いのが特徴です。

 2位は金沢工業大学です。「面倒見がよい大学」でトップでしたが、その中で就職の面倒見のよさを指摘する高校が数多くありました。高校からの評価も「キャリアカウンセラーが常駐し、個別面談を頻繁に行うなど就職活動に対する支援が充実」(千葉・私立高)、「就職ガイダンスや資格の取得などのサポートが手厚い」(石川・県立高)などです。

 3位は九州工業大学です。工学部と情報工学部の2学部の大学です。高校からの評価では「大学と企業のつながりの強さを感じる」(福岡・私立高)、「メーカー企業と良好な信頼関係が築けている」など、企業との絆の深さを指摘する評価が目立ちました。工業系の大学は人材育成だけでなく、地元企業との共同研究など、地元との結びつきが深く、それが就職実績に結びついているようです。その結果、工業系大学がランキング上位に来ています。九州工業大学も地元企業への就職に強いとの評価があります。

 4位は法政大学、5位は昨年の14位から躍進した福岡工業大学、6位は産業能率大学でした。法政大学で評価が高かったのは「在学していた生徒の就職状況を公開してくれる」という点でした。今は高校と生徒のつながりが深くなっており、大学進学後も卒業生のことを気にする教員は多く、そのニーズにこたえることで評価が高いようです。

 また、理工系の大学、理工系学部がある大学が上位に来ていますが、産業能率大学は経営と情報マネジメントの文系2学部、12位の国際教養大学も国際教養学部だけの単科大学です。いずれも教育の中身の評価が高く、その結果として就職実績も高く、就職に強い大学として評価されています。

 さらに、ランキングには実就職率(就職者数÷<卒業生数-大学院進学者数>×100)が高い大学も多くなっています。卒業生数1000人以上でトップの97.5%の金沢工業大学が「就職に力を入れている大学」2位、3位で実就職率が国公立大12年連続トップの福井大学が9位に入っています。やはり、このような実就職率の高さも評価の基準になっています。

 受験生や保護者にとって、就職のことを考えながら、大学・学部を選ぶのは当たり前のことになってきました。それだけに就職への関心は高くなっています。入り口の入試の難易度だけでなく、各大学の「就職力」が志望校選びの決め手になってきています。

(大学通信常務 安田賢治)

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安田賢治(やすだ・けんじ)

大学通信常務

兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、1983年に大学通信入社。現在、同社常務取締役で、出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。小・中・高・大の入試から高校の大学合格実績、大学生の就職までの情報提供と記事を執筆、講演も多数。大正大学人間学部で講師も務める。著書に「中学受験のひみつ」(朝日出版社)、「笑うに笑えない大学の惨状」「教育費破産」(ともに祥伝社新書)がある。

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