旧帝大が上位独占? 私大の逆転は…? 「教育力が高い大学」ランキング
入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。
筆者が常務を務める大学通信は毎年、全国の進学校2000校にアンケートを行っています。今年は739校から回答があり、項目別に進路指導教諭におすすめの大学を挙げてもらいました。その中で「教育力が高い大学」はどこかを聞きました。5校連記で記入してもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント…として計算し、集計しています。上位に入った大学を紹介しましょう。
私大トップは東京理科大
トップは14年連続で東京大学です。この結果は入試の難易度などから、「当然のことだろう」と思う人も多いかと思いますが、2位は東北大学で、京都大学を上回りました。東北大学は地元の東北・北海道地区で高い評価を得ています。このように、トップ3は旧7帝大が独占しました。
東大について、都内の進学校の進路指導教諭は「大学の使命はなんといっても研究と教育です。高度な研究を行っている大学では、その最先端の知を学生に教育することになりますから、レベルの高い授業になり、学生が伸びていきます。やはり、研究力の高い大学が教育力も高いといえます」と話します。
同じアンケートの中で「研究力が高い大学」についても聞いています。その順位を見ますと、7年連続でトップは東京大学、2位が京都大学で、この2校が3位以下を大きく離しています。以下、東北大学、大阪大学、東京工業大学、名古屋大学、筑波大学、九州大学、東京理科大学、早稲田大学の順です。「教育力が高い大学」と顔ぶれが似ています。
東大については、高校の進路指導教諭からは、さらに「進学選択(以前は進学振り分け)の存在が学生のやる気につながっている」との指摘も多くなっています。東京大学は入試の段階では、文科1類や理科1類など6学類別に募集しています。それが2年次から3年次に進級する時に学部学科に分かれるのです。
これを「進学選択」といい、希望の学部学科に進学できるかどうかは、それまでの成績で決まります。だから、学生は熱心に学び、教員もそれに応えることが大学の教育力の高さに結びついているようです。
東京大学では、1、2年次の教養教育を駒場キャンパス、3年次からの専門教育を一部の学部を除き、本郷キャンパスで学びます。ただ、ここ2年のコロナ禍で、東京大学でもオンライン授業が主流になりました。もう2年になりますから、駒場に通ったことのない学生が2022年から初めて、本郷キャンパスで学ぶ予定ということになります。
4位は公立大トップの国際教養大学、5位は大阪大学で、ここまで国公立大学の評価が高くなっています。6位は私立大トップの東京理科大学です。1881年に開学した東京物理学講習所が前身で、その2年後、東京物理学校に変わります。授業が厳しく、落第も多かったことで知られ、こういった歴史的背景と伝統は今も受け継がれ、それが教育力の高さと評価されているのでしょう。
「教育力が高い大学」の評価を地域別に見ると、北海道・東北は東北大学 、関東・甲信越は東京大学、北陸・東海は名古屋大学、近畿は大阪大学、中国・四国は京都大学、九州は九州大学がそれぞれトップでした。地元、もしくは地元に近い旧7帝大の評価が高いのが特徴で、順当な結果といえるかもしれません。
(大学通信常務 安田賢治)
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