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千葉工大は食券無料配布 高校教諭が選ぶ「コロナ対応が上手だった大学」ランキング

入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。

コロナ対応が評価された大学は?
コロナ対応が評価された大学は?

 新型コロナウイルスが国内で流行し始めて、2年がたとうとしています。筆者が常務を務める大学通信は毎年、全国の進学校2000校にアンケートを行っており、項目別に進路指導教諭におすすめの大学を挙げてもらっていますが、今年は「コロナ対応が上手だったと思われる大学」はどこかも聞きました。5校連記で記入してもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント…として計算し集計。739校から回答がありました。上位に入った大学を紹介しましょう。

学生の食生活も支援

「コロナ対応が上手だったと思われる大学」上位10大学
「コロナ対応が上手だったと思われる大学」上位10大学

 昨年、2020年は突然のコロナ禍の感染拡大、3カ月近い休校期間などがありました。そのため急きょ、対面授業からオンライン授業に切り替える大学が続出し、学生にオンライン授業を受ける準備として、奨学金を支給する大学も出てきました。どこの大学も初めてのことで条件は同じはずでしたが、それでも、新型コロナへの対応では差がつきました。

 トップは千葉工業大学でした。コロナ禍前から、学生全員にiPadを持たせていたこともあり、オンライン授業は問題なく実施できたとのことです。ただ、対面授業も昨年の6月から再開し、検温、消毒は教職員総動員で実施しました。理系の大学では実験、実習が多く、大学で授業を受ける必要性が高いため、感染防止策を講じた上で早めに対面授業を再開したそうです。

 また、地方からの学生などがコロナ禍によって、部屋からなかなか出られず、食事への不安があったため、学生に無料で食券を配り、学生食堂を朝から晩まで開きました。こうした取り組みで学生の食生活を安定させたのです。それだけでなく、受験生に対してもコロナ不況の影響を考慮し、2021年の入試で共通テスト利用入試の受験料を無料化、2022年入試でもこの措置は継続するといいます。

 千葉工大に対する、高校の進路指導教諭の評価を見ますと「メディアにも取り上げられるほど、早い時期から対面授業開始、学生への経済支援の充実」(北海道・私立高)、「共通テスト利用入試の受験料無料化、ウェブ、オンライン授業の導入の早さ」(東京・私立高)といった点が高評価の理由として挙がっています。

 千葉工大の高評価の理由にもありましたが、入試でのコロナ対応がどうなっているかを重視する進路指導教諭が増えています。「コロナ対応が上手だったと思われる大学」2位は、早くからコロナ対策を実施した立教大学です。文学部の一部を除き、英語を民間英語試験のスコアか共通テストの英語の成績に代え、大学独自の英語試験を廃止しました。

 さらに、試験日を連続して複数回設け、受験生自身の併願プランに合わせて日程を選べる方式を始め、人気になりました。試験日を分散させることで感染リスク対策にもなり、評価されたとみられます。志願者数を見ると、コロナ対応1位の千葉工業大学、2位の立教大学ともに2020年より増加しました。ほとんどの私立大の志願者が減った中、特筆すべきことでしょう。

 他にも、入試改革を実施した3位の早稲田大学、5位の横浜国立大学、11位の上智大学、16位の宇都宮大学などが上位に入っています。横浜国立大学と宇都宮大学は共通テストの成績だけで合否を発表するとし、大学独自試験は行いませんでした。それがコロナ対策として評価されました。また、7位の駒沢大学は2021年の入試前、「4月から原則、対面授業を実施」と公表、それが高評価につながったとみられます。受験生もキャンパスに通いたい気持ちが強いことの表れでしょう。

 新たな変異ウイルス「オミクロン株」拡大への懸念もあり、受験生や高校側が大学のコロナ対応を注視する傾向は今後も続きそうです。

(大学通信常務 安田賢治)

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安田賢治(やすだ・けんじ)

大学通信常務

兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、1983年に大学通信入社。現在、同社常務取締役で、出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。小・中・高・大の入試から高校の大学合格実績、大学生の就職までの情報提供と記事を執筆、講演も多数。大正大学人間学部で講師も務める。著書に「中学受験のひみつ」(朝日出版社)、「笑うに笑えない大学の惨状」「教育費破産」(ともに祥伝社新書)がある。

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