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自殺したい…夏休み明けの子どもの異変、親はどうする? 心の不調、サインは?

夏休み明けは、子どもたちの心の不調が心配される時期です。子どもの異変に、親はどうやって気付くべきなのでしょうか。「学校に行きたくない」と子どもが言ったら、どう対応すればよいのでしょうか。

「学校に行きたくない」子どもにどう対応?
「学校に行きたくない」子どもにどう対応?

 夏休み明けは、子どもの自殺が多発する時期です。今年は特に2年続きのコロナ禍の夏で、子どもたちの心の不調が心配されます。子どもの異変に親はどうやって気付くべきなのでしょうか。また、「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき、どう対応すればよいのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

時間をかけて話を聞く

Q.夏休み明けは、子どもの自殺が増えるといわれます。どのような要因が考えられますか。

田中さん「確かに夏休み終盤から夏休み明けにかけて、子どもの心身の不調が出やすく、この時期に子どもの自殺が多いことが知られています。それにはさまざまな要因が複合的に影響し、中でも、学校問題が大きなウエートを占めると考えられています。

例えば、学校に関連する問題には、クラスメートや教師との対人関係のトラブル、いじめ、学習の遅れ、登校困難・不登校などがありますね。そして、これらの問題を1人で抱え込んだ子どもが新学期を迎え、『他人に弱みは見せられない(見せたくない)』『相談しても何も変わらない』と思い詰め、危機的な心理状態に陥ってしまうのです」

Q.今年は特に上半期の子どもの自殺が多いとされます。コロナ禍の影響もあるのでしょうか。

田中さん「今年の上半期は昨年の上半期のように、休校から分散登校を経て、登校再開となることもなく、通常の登校に戻っていました。そして、感染防止策を行いながら、部活も再開していると聞きます。子どもの自殺が増えた要因としては、先述したような対人関係のトラブル、いじめ、学習の遅れなどの問題が生じても、コロナ禍の影響で保護者の側も余裕がなく、子どもの問題に十分に対応しきれていなかった可能性があります。

また、教師もコロナ禍で発熱などの身体不調がある子どもの対応や感染防止策に追われ、子どもたちのメンタル不調に気付いてはいても、対応が後手に回っていたのかもしれません」

Q.診療現場で見る、夏休み中の子どもたちの様子はいかがですか。

田中さん「夏休み中に昼夜逆転の生活となり、新学期に起床困難から登校困難となる子どももいます。生活リズムの乱れはメンタル不調の原因になることがあるので、規則正しい生活を心掛けるようアドバイスをしています。

また、すでに診察を受けている子どもたちとは夏休み中の受診の際、保護者と一緒に、新学期が始まる不安と期待について話題にするのが、夏休み明けへの対策の一つです。中には、不安が大きい子どもが少なからずいますので『無理はしてほしくないけど、心機一転、やれることからやってみようね』などと伝えるようにしています」

Q.夏休み明け、子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親はどう対応すべきでしょうか。

田中さん「ケース・バイ・ケースだとは思いますが、まずは子どもの『学校に行きたくない』という気持ちを受け止めることが大切です。シンプルに『なんか行きたくないよね』と子どもの言葉を受け止めた上で、ゆっくり時間を取って、『どうしたのかな?』と相談してみるとよいでしょう。もちろん、大人でも子どもでもよくある、単になんとなく行きたくないだけで、実際に行ってみると、なんでもないということもあるでしょう。

しかし、『学校に行きたくない』という話をきっかけにして、あれこれ話しているうちに、冒頭で述べたような、クラスメートや教師とのトラブル、いじめ、学習の遅れの心配といった悩み事が聞き出せることもあります。時間をかけて、子どもと話してみて、『それはとってもつらいね』『悩みが深そうだね』『一度、専門の先生に相談してみようか』ということになれば、受診を検討してみてください」

Q.「学校に行きたくない」とまでは言わない子どもについて、心の不調や不安定さを読み取るサインがあれば教えてください。また、そういった兆候が出たとき、親はどうすべきでしょうか。

田中さん「『学校に行きたくない』とは言わない子どもでも、遅刻したり、早退したりする日が増えるなど不調のサインを出しているものです。他にも、普段の様子と違って笑顔がない▽口数が少ない▽ご飯を残すようになった▽なかなか眠れていないようだ▽『おなかが痛い』と言ってトイレに長時間こもる▽何でも面倒くさがる▽ネガティブな言葉や死にまつわる話題が増えた▽イライラしやすい――といった状態には注意が必要でしょう。

もちろん、誰にでも多少の不調はあるものですが、週末に十分な休息を取っても回復することなく、そうした状態が週をまたいでも続くようなら、病院を受診することを強くすすめます」

(オトナンサー編集部)

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田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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