「辞書にある『自己満足』の英訳は、性的ニュアンスを含む」投稿が話題に、識者に聞く
「自己満足」の英訳として「self-satisfaction」は不適切、という趣旨の投稿がSNS上で話題に。ふさわしい英語がないばかりか、セックス関連のように誤解される場合もあるそうです。ツイートをした異文化理解の専門家に聞きました。
SNS上で「自己満足」の英訳(「self-satisfaction」「self-gratification」など)に関する投稿が話題となりました。その内容は「日本語には『自己満足』という表現はあるが、英語には相当する言葉がない」「和英辞書を引くと英語が出てくるが、実はその全てはセックス関連のように聞こえる」「誤解されるので使わないでください」というもの。これに対し「日本語も英語も難しい」「どういう言い方をするのが正しいんだろう」など、さまざまな声が上がりました。オトナンサー編集部では、このツイートの主で「英語の品格」(集英社インターナショナル)などの著書がある経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんに聞きました。
多くの日本語は英語と100%一致しない
Q.今回のツイートに至った経緯について教えてください。
ロッシェルさん「長い間、この言葉の英訳には問題があると考えていました。よく使われる『self-satisfaction』や『self-gratification』は、セックス関連のイメージを想起させるため、品がない英語である点が気になっていたのです。先日、その表現を使った顧客に、その言葉や表現の使用を控えた方がよい旨を伝えたのがきっかけで、ツイッターを通じてより広く警告すべきだと思い立ちました。最近『英語の品格』という本を出版したこともあって、品格ある英語を身に付けたい多くのフォロワーにこれを伝えれば、参考にしてもらえると思いました」
Q.「自己満足」の英訳として「self-satisfaction」などがふさわしくないのはどうしてですか。
ロッシェルさん「多くの日本人は、すべての日本語にぴったりと当てはまる英語の表現があると信じているかもしれません。辞書を引くことで、それらの言葉を見つけられるように感じているのです。しかし、多くの日本語には、100%合致する英単語はありません。そのコンセプト自体は日本にだけ存在するもので、ほかの国には存在しないからです。そのため、そのコンセプトを英語で伝えたい場合は、一つの単語だけでなく『説明』が必要です。たとえば『お疲れさまでした』『よろしくお願いします』は、日本にだけ存在するコンセプトで一つの英訳がありません。つまり、前後の文脈によって適切な英訳が変わるのですが『自己満足』もその一つと言えます。『Self-satisfaction』は一見、ピッタリと一致しているように見えますが、実は意味が異なり、『うぬぼれ』に近いニュアンスを持っています。また、性的なニュアンスを含む言葉に聞こえるので、誤解を招く危険性もあります。『self-gratification』は性的ニュアンスが一層強くなります」
Q.「self-satisfaction」に代わりうる表現は何でしょうか。
ロッシェルさん「『doing something that makes you feel virtuous but isn’t actually beneficial to anyone else』『It makes them feel like they have done something, but nobody else cares』『It gives them a sense of accomplishment, but it’s an empty one』などです。『self-congratulatory』『pleased with oneself』『self-serving』も前後の文脈によっては使えるかもしれません。翻訳の難しさは、単語一つ一つではなく全体を見る必要があることです。しかし、多くの日本人が、このことを十分理解しているとは言えません」
(オトナンサー編集部)
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