コロナに屈さず 日向坂46、ライブパフォーマンス集団としての進化と真価
3月でデビュー2周年を迎える日向坂46。「NHK紅白歌合戦」出場など、飛ぶ鳥を落とす勢いの同グループの根幹に筆者が迫ります。
3月でデビューから2周年を迎える日向坂46。2019年にデビューシングルが発売された際の日付に合わせ、3月26、27日には記念イベント、そして、メモリアルライブがそれぞれ配信で開催されることになっています。
日向坂46は昨今、テレビバラエティーや情報番組に頻繁に登場し、「NHK紅白歌合戦」にもすでに2度出場を果たしています。「日向坂46」名義で活動を始めてからの足跡だけを考えれば、メディアを席巻するに至るまでの道程は極めて順調、かつ、ハイスピードなものに見えます。
けやき坂46時代からの「陽性の表現」
とはいえ、欅坂46(現・櫻坂46)の妹分的なグループとして、「けやき坂46」の名で活動をスタートしてからの歴史を顧みると、すでに5年近くのキャリアを持つ組織ということになります。
重要なのは、当時の欅坂46のアンダーグループ的な人々として位置付けられ、いまだ、グループ自らの立場が決して定かであるとは言えなかったけやき坂46時代、すでに欅坂46をトレースするのとは異なる、オリジナルのカラーを探り当てつつあったということです。
今日、日向坂46に関して、しばしばフィーチャーされるようなテレビバラエティーへの適性や、ハッピーさを貴重とする代表的な楽曲群など、多岐にわたる陽性の表現に関して言えば、すでにけやき坂46時代にその萌芽(ほうが)が生まれていました。
また、パフォーマンスグループとしての日向坂46を考えるとき、そうした陽性の特徴を最大限に生かしつつ、独自のスタイルへと昇華した表現を見ることができるのが、単独コンサートの場です。日向坂46が得意とするのが、公演全体に一本のストーリーを引いてみせるようなコンセプチュアルなライブ構成です。
「坂道シリーズ」において、コンセプチュアルなライブ表現といえば、欅坂46が構築してきた種々のコンサートが想起されるかもしれません。振り付けを担当するTAKAHIRO氏の演出の妙も含め、シリアスなトーンで貫徹された世界観や演劇的なパフォーマンスは強いインパクトを残し、現行の櫻坂46にとっても大きな財産になりました。
表面的には、日向坂46が体現するものは欅坂46のそれとは大きく異なります。しかし、ライブ公演全体に統一的なストーリーを設けて、半ば演劇的に展開するその構成は、強いコンセプト性を感じさせます。
例えば、それが明快に現れるのが、クリスマスシーズンに開催される単独ライブです。2019年12月に開催された「ひなくり2019~17人のサンタクロースと空のクリスマス~」では、クリスマスにちなんだ物語をライブ全体で紡ぎながら、グループの持ち曲をストーリーに当てはめるように構成し、幾分、音楽劇のような趣の公演を実現していました。
また、ライブ会場となった幕張メッセ国際展示場の平面的なスペースに並べられた客席の中に、メンバーがパフォーマンスする場を遍在させ、オーディエンスを巻き込むような空間を実現してもいました。こうした成果からは、日向坂46はすでにして、ライブ表現に優れたグループにもなりつつあることがうかがえます。
もっとも、先述のライブ「ひなくり2019」からほどなくして、世界は新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、今日に至ります。「ひなくり2019」の際に発表された2020年のライブツアーも、その先に予定された東京ドームでのライブも、開催が見送られました。日向坂46名義としてのキャリアを振り返れば、実にその活動期間全体の半分ほどがコロナ禍と共にあることになります。
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