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西野七瀬、白石麻衣、生田絵梨花…“役者業”相次ぐ乃木坂46卒業生

西野七瀬さん、白石麻衣さん、生田絵梨花さん、深川麻衣さん、伊藤万理華さん…乃木坂46の卒業生たちが“役者”として存在感を放っています。

西野七瀬さん、白石麻衣さん(2020年2月、時事通信フォト)
西野七瀬さん、白石麻衣さん(2020年2月、時事通信フォト)

 2022年秋開始予定のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の追加キャストが今月12日に発表され、乃木坂46の山下美月さんが出演することになりました。ちょうど1年前に出演していた「着飾る恋には理由があって」(TBS系)などをはじめ、近年、演技者としての進境著しい山下さんは、俳優を多く輩出する組織としての乃木坂46を象徴する存在の一人と言えるでしょう。

 このように乃木坂46は今日、グループに在籍している段階からメンバーたちがさまざまな作品に俳優として参加し、キャリアを重ねることが多く、その環境はメンバーたちの長期的なキャリアの礎になっています。これはまた、一朝一夕に生まれた環境ではなく、結成時からの集団的かつ継続的な歩みによって、少しずつ形成されたものです。

 そして、その立役者となった草創期メンバーたちもまた、発展的に一人一人の俳優としての歩みを続け、現在形のプレゼンスを増しています。そうした活躍によって、俳優を育む場所としての乃木坂46をいっそう感じることができるのです。

出演作続く西野七瀬

 かつて乃木坂46の顔として活躍した西野七瀬さんは、グループを離れて以降、テレビドラマや映画にコンスタントに出演。昨年は「孤狼の血 LEVEL2」「鳩の撃退法」、テレビドラマシリーズの映画化「あなたの番です 劇場版」と、出演映画の公開が相次ぎました。

 そして、今月18日から放送が始まったドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」(関西テレビ・フジテレビ系)では、広瀬アリスさん、飯豊まりえさんらとともにメインキャストの一人・清宮響子役を務め、他方では、今年前半のうちに新たな出演映画の公開も複数控えるなど、俳優としての地歩を固めています。

 元々、表情の微細な移ろいの表現などに優れ、それがグループ時代にも映像作品やライブパフォーマンスで発揮されていた西野さんですが、一人の俳優としての活動に入ってからもその特性を生かしつつ、ごく自然に演技の幅を広げている印象です。表現の開拓においてさらに注目したいのが、5月から出演する舞台「みんな我が子 -All My Sons-」です。

 昨春に出演した、劇団☆新感線の舞台「月影花之丞大逆転」でのエンターテインメント感とはまた大きく手ざわりの異なる、アーサー・ミラーの75年前の戯曲を、堤真一さんや森田剛さんら共演キャストとともにどのように具現化していくのか楽しみです。

 また、西野さんは昨年に続いて、今春も「アサヒスーパードライ」のCMで白石麻衣さんと共演したことも記憶に新しいところです。かつて乃木坂46をともにけん引した同士が、それぞれの道を歩く中で再度、作品上で交差するさまがうかがえるのは、継続的に活動を見てきた受け手にも得難い感慨をもたらします。

 その白石さんは、今年1月クールのドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)に出演。主人公・久能整(菅田将暉さん)が遭遇するバスジャック事件の起因に関して、重要な位置に立つ犬堂愛珠役を務め、特有の存在感を示していました。

 さらに新鮮な活躍を見せたのが、4月15日から公開されている劇場版「名探偵コナン」シリーズ最新作、「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」へのゲスト声優出演です。ストーリーの鍵となる人物の一人、エレニカ・ラブレンチエワ役を務めた白石さんは、声のみの演技でも、りんとした雰囲気を強くにじませ、これまでもさまざまな場で示してきた適応力の高さを発揮しています。

生田絵梨花は独自の道を開拓

 昨年いっぱいで乃木坂46を卒業した生田絵梨花さんは、グループ在籍中から主として大劇場のミュージカルに多く出演してきましたが、そのキャリアを引き続き重ねつつ、映像作品でも優れた適応を見せています。3月にWOWOWで放送およびオンデマンド配信が始まった「松尾スズキと30分の女優2」にラインアップされた生田さんは、松尾スズキさんとダブル主演のスタイルでコントを披露。

 松尾さん特有の笑いの世界に見事にフィットしているばかりでなく、生田さん自身のミュージカル俳優としての足跡があるからこその設定を存分に生かし、余人をもって代え難い世界観を作り出しています。乃木坂46のメンバーだった頃も、早くから独自の道を開拓してきた生田さんですが、同作では演者としてのさらなる可能性を感じさせます。

 すでに、一人の俳優としてのキャリアも長くなってきた深川麻衣さんは、テレビドラマ「特捜9」シリーズ(テレビ朝日系)最新作の「season5」に参加。今月20日放送の第3話では、深川さん演じる高尾由真がいよいよ特捜班に加わり、さらに作品内での足場が本格的に出来上がっていくことが期待されます。

 あるいは、近年、高い評価を得た映画「サマーフィルムにのって」や演劇「もっとも大いなる愛へ」などに出演し、独特のスタンスを固めつつある伊藤万理華さんが、前田敦子さんや菊池風磨さんらと共演した、根本宗子さんの戯曲を原作とする映画「もっと超越した所へ。」も、今年公開が予定されるなど、注目作が続きます。

 ここでは、直近の作品を中心にピックアップして列記していきましたが、他にも映像作品か舞台演劇かを問わず、乃木坂46出身の多くの俳優が幅広く活動し、それぞれに多様な立ち位置や得意分野の広がりを見せています。

 グループ在籍中のメンバー、グループから離れ個々としての活動を続ける人々、いずれもが、それぞれの形で道を切り開いているさまを概観していくと、乃木坂46にルーツをもつ俳優たちが、エンターテインメントの世界に広く根を張っていることがうかがえます。

(ライター 香月孝史)

香月孝史(かつき・たかし)

ライター

1980年生まれ。ポピュラー文化を中心にライティング・批評やインタビューを手がける。著書に「乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟」「『アイドル』の読み方 混乱する『語り』を問う」(ともに青弓社)、共著に「社会学用語図鑑 人物と用語でたどる社会学の全体像」(プレジデント社)、執筆媒体に「RealSound」など。

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