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出版不況を吹き飛ばす、“坂道シリーズ”写真集大ヒットの軌跡をたどる

出版物の推定販売額がピーク時の半分を下回るなど“出版不況”が叫ばれる中、乃木坂46や欅坂46など“坂道シリーズ”の写真集が快進撃を続けています。

生田絵梨花さん
生田絵梨花さん

 長らく本が売れない時代といわれています。世間的に“出版不況”という言葉も使われるようになって久しいですが、出版科学研究所が今年1月に発表した統計によると、2018年の出版物の推定販売額は前年比5.7%減の1兆2921億円。ピークだった1996年の2兆6563億円の半分を下回り、紙媒体の意義を問う関係者たちの声もささやかれています。

 しかし、出版不況が叫ばれる中、逆風を吹き飛ばすかのようにベストセラーや重版をたたき出しているアイドルの勢力があります。秋元康氏のプロデュースによる、乃木坂46や欅坂46などの“坂道シリーズ”です。

「インターミッション」は30万部達成

 直近でも、今年1月に刊行された乃木坂46の1期メンバー・生田絵梨花さんの2nd写真集「インターミッション」(講談社)が、女性ソロ写真集としては異例の20万部という初版部数で販売スタート。わずか2週間で完売し、およそ1カ月後には3度目の重版により累計発行部数30万部を達成しました。

 同グループでは、2017年2月に刊行された1期メンバー・白石麻衣さんの2nd写真集「パスポート」(同)も、今年2月に24度目の重版で35万部を突破しています。

 欅坂46では、2017年12月に刊行された長濱ねるさん初のソロ写真集「長濱ねる1st写真集 ここから」(同)が、オリコンの2018年「上半期BOOKランキング」の写真集ジャンルで1位を獲得。発売からおよそ半年で17.5万部の売り上げを記録しています。

 さらに、2018年11月にグループを卒業した今泉佑唯さんの、グループ在籍時の同年10月に刊行された初のソロ写真集「誰も知らない私」(主婦と生活社)が初版の累計発行部数10万部を達成。2017年12月に刊行された渡辺梨加さんの1stソロ写真集「饒舌な眼差し」(集英社)や、2018年6月に刊行されたキャプテン・菅井友香さんの1stソロ写真集「フィアンセ」(講談社)も累計売り上げ6万部以上を記録しています。

 写真集としては、「1万部売れればベストセラー」といわれる中、ここ数年の坂道シリーズの勢いは異例です。オリコンが発表した2018年「年間BOOKランキング」の写真集ジャンルを見ても、乃木坂46のメンバーが撮影したオフショットを集めた、2018年6月刊行の写真集「乃木撮 VOL.01」が累計売り上げ30.7万部で1位を獲得したのを皮切りに、トップ10内に関連する9作品がランクインしています。

 実際、坂道シリーズの現場へ足しげく通うファンに話を聞いたところ、写真集を購入する理由として、「握手会では接触の時間が限られているため、テレビやライブでは味わえない素顔も見たいから」という回答が返ってきました。

 また、ライブ会場などでは女性ファンの姿も目立ちますが、女性誌のモデルを経験している乃木坂46の白石さんや、欅坂46の渡辺さんなどをきっかけにしたファン層の幅広さも、売り上げに貢献している一因といえそうです。

 今年2月“ひらがな”の愛称で親しまれていた、けやき坂46が「日向坂46」へ改名したことが話題を集めましたが、今年1月に刊行されたメンバー・渡邊美穂さんの1stソロ写真集「陽だまり」(幻冬舎)も重版が決まるなど、新たにベストセラーを達成するメンバーへの期待もかかります。

(編集者・ライター カネコシュウヘイ)

カネコシュウヘイ(かねこ・しゅうへい)

編集者・ライター

1983年11月8日生まれ。埼玉県在住。成城大学出身。2008年に出版業界へ入り、2010年に独立してフリーランスに。以降、Webや雑誌でエンターテインメント系分野を中心に取材や記事執筆に注力する。月平均4~5回ほど、自らチケットを取ってライブへ足を運ぶほど現場主義のアイドル好き。自分にとって、アイドルがいなかったら「これほどまでに他人の人生で一喜一憂することはなかった」と痛感。著書に「BABYMETAL追っかけ日記」(鉄人社)。ツイッター(https://twitter.com/sorao17)。

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