オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

小学校前に教えすぎると先生に嫌がられる…? それって先生の都合では?

小学校入学前に文字や数字を教えると、子どもが退屈したり、「もう知っている!」と騒いで担任の先生を困らせたりする、という話があります。事実でしょうか。

入学前に教え過ぎると…?
入学前に教え過ぎると…?

 子どもが小学校に入学する前に「学校で困らないように」と先走って文字や数字を教えたら、授業中に「もう知っている!」「もう幼稚園で習った」と自慢げに騒ぎ出し、担任の先生から、「授業がやりにくい。嫌な子だなあ」と思われる。また、子ども自身が既に知っていることを学校で習うと退屈してしまう――。このような話を聞いたことがありませんか。実際のところはどうなのでしょうか。

ルールを教えるのが先生の役割

 私は長年、学習塾で幼児、小学生に指導をしてきました。知り合いに学校の先生も多くいます。幼児期から絵本の読み聞かせをしている家庭も多いと思いますが、子どもは「繰り返し」が大好きです。「て・に・を・は」まで一言一句、丸暗記している絵本を飽きもせず、毎晩毎晩、「これ読んで」と持ってきます。

 運動が得意だったら体育をやりたいですし、「音楽が好きだから音楽をやりたい」と思いますよね。「好きこそ物の上手なれ」といいますが、「知っているからまた聞きたい」「得意だから興味を持つ」のが人間だからです。

 小学校で、算数の授業を一番熱心に聞いているのは「算数が得意な子」、国語の授業を最も熱心に聞いているのは「国語が得意な子」です。苦手意識を持っている子はあくびをしたり、他のことを考えていたりして集中できません。宿題も不得意な子はやりたがらず、得意な子はどんどんやってきて、結果的に学力差が開いていく一方…ということもあります。

 もし、チンプンカンプンのドイツの歴史の授業を、来る日も来る日もドイツ語で受けなくてはならなかったらどうでしょうか。45分間着席していることが苦痛になります。睡魔も襲ってくるでしょう。

 分からないと眠くなったり、飽きたりすることはありますが、知り過ぎていて眠くなったり、授業に飽きてしまったりすることはあまりありません。眠くなる要因は授業の内容ではなく、先生の抑揚のない退屈な話し方にあるケースもあります。むしろ、「知っているからさらに聞きたくなる」のです。

 子どもは自分が知っていることを言いたがります。他の子をばかにしているわけでも、自慢したがっているわけでもありません。「知っているから話したい」だけなのです。ただ、小学校の教師の中にはこれを嫌がる人も実際にいます。「これだから、入学前にいろいろ知識を入れられると困るんだよね。授業がやりにくいんだよね」と職員室でぼやいていることもあります。

 小学校は集団での指導です。35人の生徒たちに自由に発言させたら収拾がつきません。こんなときは、担任が授業中のルールを教えていけばいいのです。

 例えば、先生が話をしているときに生徒が「僕、もう知っている」と言ったときは「知っていても、今は先生がお話ししている時間だから、静かにしていようね」。また、別の子を指名しているのに答えてしまう子がいた場合は「あら、あなたは○○さんですか? 自分が指されたら答えようね。今、先生は○○さんに質問しているから口は閉じていようね」と教えます。

 このように、ルールを丁寧に教えていくのが先生の役割です。「知り過ぎていると小学校に入学後、授業を妨害するから、幼児期にいろいろ教えないでほしい」というのは、先生の都合なのではないでしょうか。

話に割り込まないよう、しつけを

 漢字について、こんな話もあります。

 小学1年の子どもが自分の名前を漢字で「岩川幸子」と書いたら、「×」をつけられました。それを見た母親が担任に抗議したところ、「漢字はまだ、国語の教科書で出ていないので書いてはいけません」「落とし物をしたとき、手元に戻ってきませんよ」と言われてしまったのです。そして、教科書で「川」という字が出てきたら、「いわ川さちこ」と書くように言われました。わが子に心を込めてつけた名前に「×」をされた母親は悲しい思いをしたそうです。

「岩川幸子」は仮名ですが、小学1年の子が自分の名前を漢字で書いてバツをつけられたこと、「川」という漢字を習ったら「川」だけ漢字で書き、あとは平仮名で書くように指導されたこと、そして、母親の抗議と先生の返答――これらは全て現実に起きたことです。「漢字はまだ教えていないから」「教えた『川』だけ漢字で書いていい」という主張は屁理屈(へりくつ)ではないでしょうか。これも先生の都合だと思います。

 学校で習う以上の知識を持っていることがいけないのではありません。それよりも「誰かが話している最中に割り込むことをしないしつけ」をすることが大切です。そうすれば、大人になってからも「自分のことばかり話す人」「話を横取りする人」「相手が話している最中に話の腰を折る人」と周りから思われ、嫌がられてしまう大人にはなりません。

 保育園での送迎時、担任と親が話しているときに子どもが話し掛けてきたら、「今、先生と大事なお話をしているから静かに待っていようね」としつけていくことで身に付いていきます。「入学前に知り過ぎている」ことは決して悪いことではないと私は思います。皆さんはどう思いますか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

コメント