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「はずれ先生」は誰? 連絡帳や送迎時の応対だけで判断する“危うさ”

新年度が始まり、幼稚園や保育園で新しい担任が発表されると、ママ友の間で話題になるという「はずれ先生」。しかし、親の思う「はずれ先生」は本当に“はずれ”なのでしょうか。

親は「はずれ先生」と言うけれど…本当は?
親は「はずれ先生」と言うけれど…本当は?

 幼稚園や保育園で新年度の担任が発表されると、「ああ、今年は“はずれ”」「うちは“当たり”だ」と、まるでくじ引きのように、担任について「ああでもない、こうでもない」とママ友間の茶飲み話で盛り上がることがあります。

 でも、親が思っている「はずれ先生」は果たして、本当に“はずれ”なのでしょうか。また同じように、親が思っている「当たり先生」は果たして、実際に“当たり”なのでしょうか。

「連絡帳にあまり書き込まない先生は“はずれ”」?

 幼稚園や保育園に通う子どもがいると、親と離れている時間、どんなふうに過ごしているか気になるもの。そんなとき、子どもの帰宅後、真っ先に開くのが連絡帳です。

 ところが、ワクワクして開いた連絡帳に「大きな大便をしました」「楽しそうに遊んでいました」のたった1行。「ガーン! なんだぁ、これだけ? 今度の担任は、うちの子をちゃんときめ細かく見てくれているのかしら」と不安になる人もいるでしょう。そして、「昨年度の担任は詳しく様子を書いてくれたのに、ああ、今回は“はずれ”た」と感じてしまう人も。が、果たしてそうでしょうか。

 私は以前、保育園での仕事に関わっていたことがあります。そのため、日中、大勢の子どもの世話をしながら、20人近くの子どもの様子を連絡帳に書くことがどんなに大変なことか、よく分かります。仮に、1人分書くのに3分かけていたら、3分×20人分で60分。この1時間を捻出するのは厳しいことで、保育士にとって大きな負担です。中には、“連絡帳を書くために保育をしている”感じになってしまう人もいて、「いかに連絡帳を書くか」が目的化していました。

 また、午睡(お昼寝)の時間しか連絡帳を書けないので、午後の様子を想像しながら、「お昼寝後はお散歩に行きました。お友達と手をきちんとつなぎ、楽しそうでした」と書いている保育士もいました。さらに、「公園で走り回っていました」「友達のことをじっと見ていました」と事実だけ書いてあると、「『先生は、これがいいことと思って書いているのかしら? それとも反対の意味?』と、受け取った保護者が不安になってしまうから、ちゃんとあなたの感想も書きなさい!」と先輩保育士から注意され、自分の感想も書かねばならなくなって、時間を取られている新人保育士もいました。

簡素な連絡帳…それは「誤解」だった

 私の息子は自閉症児なのですが、まだ小さかった頃、障害児の学童保育である放課後等デイサービスに通っていました。息子が通っていた所では、子どもたちは午後4時半ごろに来るので、解散時刻の午後6時まで90分しかない状況でした。スタッフには学生アルバイトも多くいましたが、学生アルバイトに連絡帳を書かせるわけにはいかないため、20人の子どもに対し、たった3人の職員で連絡帳を書いていました。保育をしながら、90分間で、です。

 結果として、連絡帳に書かれている内容は、「おやつは焼きそばです」「外で遊びました」などの内容で、受け取っても、保護者としてはありがたみを感じない簡素なもの。親である私もつい、「読んだよ」の印としてサインやニコニコマークを入れるだけの簡単な返事で済ませるようになってしまいました。ただ、それは誤解だったのかもしれない、と後で思うようになりました。

 連絡帳にたくさん書かれていなかったとしても、内容や文章量で判断するのではなく、「その分、子どもとの関わりに時間を割いてしっかり向き合ってくれているんだろう」と考えてみてはどうでしょうか。連絡帳を書く時間よりも、子どもと向き合う時間の方が、もちろん大切ですよね。

 もう一つ、連絡帳以外での、保護者と先生との接点は「送迎時の応対」です。このときの先生の表情や立ち振る舞いで、印象が大きく左右されます。「人は見た目で相手を判断する」とよくいわれるように、人間の脳はたった3~7秒で、相手を好きか嫌いか判断してしまうそうです。すると、「いつもニコニコしているのはよい先生、そうではない先生はよくない先生」と錯覚してしまうこともあります。でも、こちらも注意が必要です。

 笑顔はもちろん大切ですが、子どもにとっての良しあしは、保育時の対応ではないでしょうか。親の前で見せる顔や、連絡帳の文章だけで“はずれ”“当たり”などと判断しないようにしたいものですね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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