公立小学校「35人学級」へ、手放しで喜べるのか
既に9割の学級が35人以下
その一方、少子化や過疎化などの影響によって、2019年度の段階で、小学校の学級の9割が既に35人以下となっていた(中学校は4分の1)という現実もあります。独自財源などの工夫で、他の学年でも40人を下回る学級編成を実施している都道府県なども少なくありません。「35人学級」の効果は36人以上の学級を多く抱える大都市圏の一部学校など、限定的なものにとどまります。
40人が35人に減れば、学級担任が児童一人一人を見る負担がそれだけ軽減されることは確かです。しかし、授業や学級経営に関しては、1クラス分を受け持つ負担が変わるわけではありません。さらに、加配定数が削られることで、学校単位で見れば、余裕がなくなる可能性もあります。
今回、「35人学級実現へ!」と大きく報道され、保護者や学校現場の喜びの声も伝えられました。制度としては確かに大きな前進なのですが、実質的な効果の大きさや残された課題を考えると、手放しで喜べる内容といえるかは大いに疑問があります。
計画的な定数改善が15年間行われてこなかったツケが小学校で3割、中学校で6割の教員が過労死ラインを超えて働いているという2016年度の文科省教員勤務実態調査に現れたと見ることもできます。今後、引き下げ効果の検証だけでなく、40人学級のまま残された中学校も含め、今どきの児童生徒の学習指導や生活指導のためには、どれくらいの教職員定数が必要なのか、本格的な検討が求められるでしょう。
(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)
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