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教員3100人増へ 増えるだけいいとは言い切れない「教育の質」の問題

中教審で答申に向け審議本格化

 文科省も手をこまぬいているわけではありません。2019年4月、中央教育審議会に「新しい時代の初等中等教育の在り方」を審議するよう諮問。中教審では8月20日から、答申に向けた詰めの議論を本格化させています。

 焦点の一つは、小学校の高学年に教科担任制を導入することです。ただし、単に小学校の定数を改善するだけではなく、中学校から、持ち授業時間数の少ない教員を小学校の教科担任として配置換えすることも検討しています。教員免許の取得に当たっても、小学校と中学校を併有しやすくします。

 その対策では、ただでさえ多忙な中学校の現場がどうなるかが心配ではありますが、文科省はこれによって、大幅な予算増につながるような教員全体の数を増やすことを抑制しつつ、小学校教員の負担も軽減する「一石二鳥」を狙いたい考えです。

 一方で、心配なデータもあります。2016年に広島大学大学院教授の山崎博敏氏(現・兵庫大学教授)が推計したところ、2021年度以降は教員需要(新規採用が必要な教員数)が大幅な減少期に入るというのです。推計では、公立小学校の教員需要は、2017年春の1万2000人から、2030年春には8400人にまで落ち込むとしていました。先述した大量退職が一段落することや、少子化の影響です。ただ単純に「教員を増やすべきだ」とは言いにくい事情もあるのです。

 今後も優秀な人が教員を志望し、免許を取得して採用試験を受けてもらえるのか。採用後に「燃え尽きる」ことなく、元気に勤務し、さらなる向上を目指して、30年余りの教職人生にわたって研修の機会を設けられるのか。教員の質は教育の質に直結するだけに、中教審は難しい課題を抱えています。

(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)

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渡辺敦司(わたなべ・あつし)

教育ジャーナリスト

1964年、北海道生まれ、横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者(旧文部省など担当)を経て1998年より現職。教育専門誌・サイトを中心に取材・執筆多数。

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