わが子の「偏食」を直そうと必死だった過去 親のしつけは食事の楽しみを殺す
発達障害の子どもには「感覚過敏」があるといわれています。その一つである「味覚過敏」による偏食には、どう対応すべきなのでしょうか。

発達障害の子どもには「感覚過敏」があるといわれています。その一つである「味覚過敏」により、決まったものしか食べられない子もいますが、好き嫌いが多いというより、「フライドポテトしか食べられない」「○○社のレトルトカレーしか食べられない」という子もいて、これを感覚過敏として許してよいのか、わがままとしてしつけなくてはならないのか、悩む人もいると思います。
しかし、もし自分が「三度の食事で、バリウムをお茶代わりに飲みなさい」と言われたらどうでしょうか。絶対に嫌ですよね。感覚過敏とは、実はそういうものだと思います。
「嫌いなものを無理やり」はトラウマにも
ある発達障害の当事者の大人が幼い頃を振り返って、「ちょっとだけ食べたら許してもらえる意味が分からなかった。ちょっとだけ食べればいいのなら、一切口にしなくてもいいのではないかと感じていた」と話していました。人間にとって、空腹を満たすことは喜びです。ですから、食事で最も大切なことは「おいしく楽しく食べること」ではないでしょうか。
親は「世の中にはおいしいものがたくさんあるのだから、もっと食事の幅を広げてほしい」「同じものばかり食べていると、栄養が偏る」と心配になりますが、大人になってから「あれもこれも食べられない」という人は少ない気がします。むしろ、嫌いなものを無理やり口に押し込まれた経験がトラウマ(心的外傷)になり、その食べ物を嫌いになることすらあります。
「障害のある子の親である私たち」(生活書院)の著者、福井公子さんの息子さんは就学前まで、白いご飯を食べられなかったそうです。そこで、「日本人なのにお米が食べられない。これは何とかしなければ」と考え、綿密な計画を立てます。例えば、最もおなかがすいている保育園からの帰宅時、ほんの一口からご飯を食べさせ、その後、大好きなチョコレートを食べてよいと許可を与える、などです。
その結果、息子さんは家に帰ることを嫌がり、揚げ句の果てには、保育園に迎えに行った母親の顔を見るなり先生にしがみついて、離れない状態になりました。ところが、スーパーに行ったときのこと。試食販売のおばさんが小さなカップに一口大のご飯を入れ、ふりかけをかけて息子さんに渡したそうです。すると、それをうれしそうに食べたというのです。そして、その日を境にふりかけご飯が大好きに…。
「障害のある子の親である私たち」の最後に、次のような言葉が書かれていました。
「期待も押しつけもしない、ちょっと太った試食販売のおばさん。私はそんなお母さんになろうと思いました」
親は子どもに偏食があることを“この世の終わり”のように感じてしまい、「好き嫌いを許さずに何でも食べさせよう!」と一生懸命になり過ぎてしまうものです。しかし、親まで“療育の先生”と化し、「家でも療育、その一環でおうちでも偏食指導」をされては、楽しいはずの食事が苦しいものになってしまうかもしれません。
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