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「中立」「公平」な放送とは何か いま問われるキャスターの矜持【前編】

元地方局アナウンサーで、現在は大学でマスコミュニケーション論の教鞭をとる筆者が、テレビニュースで重要な役割を担う「キャスター」について論じます。今回はその前編です。

キャスターの発言やスタンスをどう考えるか

 私は大学で「マスコミュニケーション論」を教える以前、山梨放送という地方局でアナウンサーをしていました。2010年3月まで18年間のアナウンサー生活でしたが、ニュースのほかにスポーツ実況やラジオのパーソナリティーなど、さまざまな仕事を経験してきました。その傍ら大学院で博士号を取得し、2010年から教べんを取っています。

 研究分野はニュースやスポーツ実況で、娯楽化が進むテレビニュースを題材として、ニュースとキャスターのあり方を論文にまとめたこともあります。今回はその時からの関心を現在のトピックと結びつけながら、テレビニュースで重要な役割を担っているキャスターについて考えてみます。

放送局に課せられている、多くの義務

 1年ほど前の4月改編の時期にテレビニュースのキャスターが相次いで降板したことを、皆さんは覚えていますか。その少し前の2月に、高市早苗総務大臣が政治的に公平でない番組を繰り返し放送した場合は、免許停止もありうるとの見解を示しました。

「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターをはじめとする各局キャスターの降板劇はその直後であっただけに「放送局側が何らかの配慮をしたのではないか」との憶測が流れました。

 ここで考えなくてはならないのは、なぜ放送メディアは「中立」「公平」に伝えなくてはならないか、という点です。表現の自由が保障されている日本で、どうしてテレビは「中立」「公平」な報道をしなくてはならないのでしょうか。それは「放送法」という法律の存在が大きく、この法律は「日本で唯一の言論法」とされる通り、報道内容を規律するものです。

 具体的に、放送法4条には「番組編集準則」と呼ばれる条文があり、政治的に公平であることや、意見が対立している問題は多角的に論点を解明する義務が放送局に課せられています。こうした縛りは印刷メディアにはありません。なぜ放送メディアにだけあるのかというと、放送は電波という有限な資源を使用していること、印刷メディアに比べて影響力が大きいことがその理由とされてきました。

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深澤弘樹(ふかさわ・ひろき)

駒沢大学文学部社会学科准教授、元・山梨放送アナウンサー

1969年甲府市生まれ。同志社大学卒業。1991年4月山梨日日新聞社入社。甲府市政記者を経て1992年4月から山梨放送アナウンサー。同社に18年間勤務し、テレビ・ラジオのスポーツ実況のほか、ニュースや情報番組などを担当した。山梨放送に勤務する傍ら中央大学大学院で学び、2009年3月に博士(社会情報学)取得。専門はニュース研究、スポーツ実況研究。2010年から現職。主な業績は「変容するテレビニュースとキャスターの役割」(春風社、2015年、単著)など(http://amzn.asia/9vTL2tw)。