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うつ病の54歳ひきこもり息子を抱えた一家…母亡き後、兄弟姉妹に求められる覚悟

福祉サービスの活用を検討

 重い沈黙がしばらく続いた後、筆者は母親に質問をしてみました。

「ちなみにご次男はお母さま亡き後、施設などに住み替えるお気持ちはあるのでしょうか」

「いいえ、今ある自宅に住み続けたいと言っています」

「なるほど、分かりました。お母さま亡き後、ご次男が自宅で暮らしていくためには確かにフォローが必要になるでしょう。しかし、ご長男やご長女にはそれぞれ、ご家庭があります。親亡き後の面倒を全てお願いするのは現実的ではありません。ご家族だけで抱え込もうとせず、外部の支援、例えば、福祉サービスを受けることも検討してみてはいかがでしょうか」

 筆者は福祉サービスを受けるためのざっくりとした流れをご説明しました。

(1)役所の障害福祉課(地域によって名称は多少異なる)に事前相談をしておく
(2)いくつかの支援団体に事前相談をしておく
(3)母親亡き後、相談や必要な手続きを速やかに行う
※役所と支援団体の間を何度も行ったり来たりすることは覚悟しておくこと
※相談に行く前に必ず電話で予約を取ること

「まずは役所で、息子さんの現在の状況やお母さま亡き後に生活する上で困りそうなことを伝えてください。どんな支援が必要になりそうか具体的に伝えるとよいでしょう。その後、希望する支援が受けられそうな団体をいくつか教えてもらい、そちらでも、同様の相談をすることになります。息子さんも相談に同席してもらうよう言われますが、同席が厳しい場合、あらかじめ息子さんの希望や意見をメモしておき、それを持参しましょう」

 筆者はさらに続けました。

「お母さま亡き後、息子さん1人で手続きをするのは難しいことでしょう。そこで、ごきょうだいの助けが必要になります。お母さま亡き後、一緒に相談に行って事情を説明したり、手続きをしたり、ということだけでも構いません。いかがでしょうか」

 長男夫婦は難色を示していましたが、長女はそれに応じました。

「そのくらいなら、私でもできそうなのでやります。事前相談も都合をつけてできるだけ母と一緒に行くようにします」

 その後、ご家族で話し合った結果、まずは母親と長女が行動することになりました。最後に筆者はご家族にお伝えしました。

「福祉サービスだけでは賄いきれない部分がどうしても出てしまいます。そのため、ごきょうだいのできる範囲でフォローをする、または民間のサービスも検討する、ということについても話し合わなければいけません。ご家族の話し合いは、これからも定期的に続けていく必要があります」

「はい、分かりました。それでも当面のやるべきことがはっきりとしたことで、まったく何も見えなかった状態に比べ、はるかに心が楽になりました。どうもありがとうございました」

 そう答える長女の瞳には、「覚悟」という名の小さな火がともっているように感じられました。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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