メルカリがアントラーズ経営権取得、譲渡額16億円は「安い」との声も…専門家に聞く
スポーツビジネスの独特の慣習
Q.メルカリは純損失を計上している企業で、短期間で終わった新規事業も複数あり、ネット上では、アントラーズの将来を心配する声もあります。
江頭さん「メルカリの中に、サッカービジネスを理解している人がいればいいのですが、本業で能力を発揮した人がアントラーズ経営陣に入ると心配です。スポーツビジネスは独特の慣習があり、顧客が多岐にわたり、経営は複雑です。知名度が高く社会性が高いにもかかわらず、年商70億円と中小企業レベルです。フリーマーケットアプリの成功体験をそのまま持ち込んだらうまくいかないでしょう。
第1に『チーム勝敗と売り上げはリンクしない』という事実です。阪神タイガースは成績が低迷していた1995~2001年も観客でいっぱいでした。一方、西武ライオンズは黄金期の1982~1992年に8回もリーグ優勝しましたが、観客動員はジリ貧でした。
第2に、市場サイズに左右されないという事実です。大都市がホームタウンのチームは売り上げが大きいとは限りません。アントラーズのホームスタジアムがある茨城県鹿嶋市は人口7万弱ですが、年間73億円(2018年)の売り上げがあります。FC東京は大都市圏を抱えながら48億円(同)です。
地域人口が多いと、ゲームを観戦した経験のある人物に出会う確率が低くなります。人口7万の地域で3.5万人がスタジアムで観戦すれば、2人に1人が鹿島の観戦者でチームを好意的に評価します。しかし、人口930万人近い東京23区で3.5万人はわずか0.3%です。この顧客濃度の違いが観客数を左右するのです。
第3に、顧客が3者いることです。チケットを購入する一般消費者、テレビ放映権を購入するテレビ局、ユニホーム広告などを購入するスポンサー企業ですが、3者が求める顧客価値は異なります。チームが強いだけでは3者の満足度は上がりません。そこには多彩なニーズが存在し、それらを正確に把握して具現化しなくてはなりません。鹿島の経営状態は良好です。ここにメルカリの経営陣が入ると、経営成績が落ちる可能性もあります。いい状態で維持することは、業績が悪い企業を再生するより困難です。
メルカリは、2018年5月に地域コミュニティーサービスの『メルカリアッテ』、2018年8月に即時買取・現金化サービスの『メルカリNOW』から事業撤退するなど、スマホアプリ市場で横展開をもくろんで失敗しています。メルカリの成功要因が『社会がシェアリングエコノミーに変化したタイミング』にうまく乗ったことだとすれば、経営陣の能力ではなかったと考えられます。
一方で、メルカリの成功体験に染まっていない外部からの経営者で、かつ、メルカリイズムのある人物を入れることができれば、成功の可能性があるでしょう」
Q.鹿島アントラーズは今後、どのようになっていくでしょうか。
江頭さん「最も恐れるのは、メルカリが『スタバ化』することです。スターバックスを急成長させたハワード・シュルツは2001年にNBAのシアトル・スーパーソニックスを2億ドルで買収し、2006年に3億5000万ドルで売却しました。2000~2001年シーズンの成績が44勝38敗、勝率.537だったものを、2004~2005年シーズンにカンファレンス準決勝進出まで成績を上げてチームの価値を上げ、1億5000万ドル(約165億円)の利益を得たわけです。
今回の鹿島アントラーズの買収価格は、サッカーチームとしては破格の安さです。メルカリ同様、急成長企業でサッカークラブオーナーを夢見るIT長者は存在するでしょう。もし、メルカリが鹿島をうまく経営できなかったとしても、購入価格が安いので最終的に『損』にはならないという計算があるのかもしれません」
(オトナンサー編集部)

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