警察官も「不誠実な対応」をすることがあるらしい…反則切符を拒否した男性の裁判から
信号無視で「反則切符」を交付されたにもかかわらず、受け取りを拒否したという男性の裁判。裁判長は「警察官の不誠実な対応が一因」として公訴棄却を言い渡しました。そもそも男性はなぜ起訴されたのでしょうか。また「不誠実な対応」とは――。
交通違反をしてパトカーや白バイに反則切符を交付された経験、おありの人も多いことと思います。
その「反則切符」をめぐって先日、大阪高裁で興味深い裁判が行われました。それは、信号無視でパトカーに摘発されたのに反則切符の受け取りを拒否したとして、道路交通法違反の罪に問われた男性の控訴審判決公判です。
報道によると、裁判長は「男性が切符を受け取らなかったのは警察官の不誠実な対応が一因」として1審の略式命令を破棄、公訴棄却を言い渡しました。男性は大阪府枚方市内で車を運転中に赤信号を無視したとして停止を求められ、「パトカーの車載カメラ映像を確認したい」と求めましたが受け入れられず、切符の受け取りを拒否して逮捕・起訴されました。
オトナンサー編集部では、この裁判の背景や「不誠実な対応」の意味についてアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に取材しました。
受け取り拒否自体は違法ではない
Q.そもそも反則切符の受け取り拒否は道交法違反にあたるのでしょうか。
岩沙さん「違反ではありません。反則切符は本来、道交法に違反し刑事罰を受けるべき人が反則金を納付することで公訴提起を免れる制度です(同法128条2項)。今回の事件は、受け取り拒否が道交法違反だったからではなく、受け取り拒否により反則金納付の通告が不要になり、公訴提起を免れなかっただけです(同法130条2号)」
Q.今回の判決をどう見ますか。
岩沙さん「本件は被告人が映像開示を求めたにもかかわらず、警察から『そのような映像はない』と言われたために反則金通知の受領を拒否しており、その後映像を見て信号無視を認めた経緯があります。被告人に、反則金を受け入れるかどうかを判断させる手続きに重大な瑕疵(かし)があるため、裁判所は『受け取り拒否』にあたらないと判断し、公訴手続きを無効にしたのでしょう」
Q.今回は交通違反でしたが刑事事件一般の捜査に関して、捜査機関の「不誠実な対応」になりうる行為はありますか。
岩沙さん「捜査機関の初動捜査に『取り調べ』があります。刑事が脅迫的な文言を使ったり、『認めれば不起訴になる』などと自白を求めたりすることは典型的な違法捜査です。違法ではないものの誠実性に欠ける取り調べもあります。たとえば、調書作成の際に訂正をお願いしたのに、『内容が同じなら訂正する必要はない』と応じてもらえないことや、供述のニュアンスを変えて調書が作成されてしまうことがあります」
Q.あってはならないことですね。
岩沙さん「捜査機関の『不誠実な対応』に遭遇した場合は、自分の主張をしっかりと貫きましょう。あまりに不誠実な対応が続くのであれば一度専門家に相談すべきです」
(オトナンサー編集部)
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