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昔からあった? 子どもたちの序列「スクールカースト」が生まれる背景とリスク

必死で「空気を読む」子どもも

 誰がどんな理由で上位や下位に分けられてしまうのか「はっきりした基準がない」ということは、別の言い方をすれば、特に理由がないのに仲間外れになったり、自分の意思や行動とは無関係に「上」「下」とランク付けされたりすることになります。当人にすれば、「なぜ嫌われたのか分からない」「あの子がAランで、なぜ私はCランなの?」など、悩むことも多いでしょう。

 こうした序列化がもたらす影響も問題ですが、いったん所属した階層の中で「空気を読み続ける」ことも大変です。先述の「みんなへのサービス精神」を持っている子どもは、進んでサービスしているというよりは、みんなに嫌われないために必死で空気を読んでいるといった方が事実に近いのです。

「どこに地雷が埋まってるか分からないから、自分の気持ちとかは関係なく、みんなが求める自分像をせっせと作ってそこに合わせるんです」と話した高校生がいました。「SNSでは、とにかく周りから嫌われないことがすごく大事」とも言っていましたが、上になるか下になるかだけでなく、同じ階層の中での「神経戦」もあるわけで、これはとてもしんどく、つらいことだと思います。

 また、一部のSNSでは、友達になるのに「招待制」を取っていたり、一度友達になっても一方的にブロックされたりします。これも自分の意思とは関係なく、相手の事情や気分次第でどうなるか分かりません。同じ階層にいる、つまり“仲間同士”の中でも「入れるか、入れないか」といった選別が行われる場合もあります。

スクールカーストをなくすことは可能か

「スクールカースト」は、学校内の生徒同士の問題と思われがちですが、「あの人は上で、あの人は下」というように差別化する空気感は、何も学校に限ったものではないでしょう。そう考えると、学校内だけ、生徒同士だけで解決できるような問題ではないと思います。

 そもそも、日本の社会は同調圧力が強く、協調性や団結心、そして、集団的な思考や行動が求められます。就活生が着るリクルートスーツなんて、その典型ですよね。一人だけはみ出したら「なんだ、あいつ」という目で見られ、「除外されて当然」という空気になります。

 集団の和を乱すもの、異質なものに対する差別意識や嫌悪感は、社会のそこかしこにあります。スクールカーストが問題で、いけないことであるならば、そのような学校を生み出している社会はどうなの、と考える視点も必要でしょう。

 子どもの社会は、結局のところ「大人の社会の反映」です。「あの子と遊ばない方がよい」「あの子の家はウチとは違う」「あの子はああだからこうなるのよ」など、大人の一方的な価値観が子どもに刷り込まれ、それが子ども同士の関係性にも影響してきます。

 だからといって、「みんな仲良く」「誰とでも友達になりなさい」というのも無理があるように思います。確かに正論ですが、現実はそう簡単にはいきませんし、そもそも大人が「みんなと仲良く」できているかといったら違うでしょう。また、「みんな」「誰とでも」を強調することで、かえって同調意識を強め、集団からはみ出すことに対する不安や恐怖、同調しない人への嫌悪感を高めてしまうこともあると思います。

 私はむしろ、「みんなと仲良くする必要はない」と言ってよいと思います。「人はそれぞれ違うのだから、全員と友達になるのは難しい」と。ただし、自分と違う人、自分と合わない人だからといって、それを理由に見下したりしてはいけない、と教えてほしいです。もし、子どもに「どうして?」と聞かれたら、「相手にとってはあなたの方が、自分と合わない人だと思われるかもしれない。そんな理由だけで相手から見下されたら、あなたはどう感じる?」と問いかけてみましょう。

 スクールカーストについても同様です。学校内だけ、生徒同士だけで解決するのは難しいと思いますが、だからこそ大人が関わっていくべきでしょう。「いじめはよくない」とか「序列や差別をなくそう」と言うだけでは、現にあるものはそう簡単にはなくなりません。正論やきれいごとで説教するのではなく「どういう点が問題なのか」「実際にどんな悩みや苦しみがあるのか」を、子どもと一緒に話し合ってほしいです。

 その際に、「話せてうれしかった」「一緒にこの問題を考えられてよかった」「そんなランク付けがあるのは悲しいね」など、何でもよいので「感情の言葉」を伝えてください。「うれしい」「悲しい」「寂しい」、そうした感情を伝えることが大切です。

 スクールカーストによって、いじめられていたり、仲間外れにされたりしている子どもは、当然ながら、とてもつらい状況にあります。下位にランク付けされたまま、周囲から敬遠されているような子どもは「自分の存在価値がないのでは」と苦しんだりもします。だからこそ、「あなたと話せてうれしい」「あなたと一緒に生きたい」といった、身近な人からの肯定が必要です。

「誰がどう言おうと、私にとってあなたは一番大切な人だ」。このメッセージをしっかりとお子さんに伝えてほしいと思います。

(文/構成・オトナンサー編集部)

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石川結貴(いしかわ・ゆうき)

作家・ジャーナリスト

家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに豊富な取材実績を持つ。短編小説集「小さな花が咲いた日」は7年連続で中学・高校入試問題に採用されている。最新刊「ルポ 居所不明児童~消えた子どもたち」では、児童虐待や貧困問題を抱えたまま放置される子どもの現状を報告した。出版以外にも新聞、雑誌への寄稿、「あさイチ」「報道ステーション」など数多くのテレビ番組に出演。2013年には「第61回日本PTA全国研究大会」の講演者に選出された。2015年、全国各地方紙(時事通信社配信)で教育特集記事「子どもとスマホ」を連載。

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