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母親の赤ちゃん抱っこが有料に? 海外で論争「カンガルーケア」、日本の現状は

産まれたばかりの赤ちゃんを母親が胸に抱く「カンガルーケア」をめぐり、海外で論争が発生しています。そこで今回は、日本におけるカンガルーケアの現状について、専門家に話を聞きました。

日本ではあまり耳慣れない「カンガルーケア」だが…

「カンガルーケア」という言葉をご存じでしょうか。これは、産まれたばかりの赤ちゃんを母親が胸の上に抱き、肌を密着させ合う行為のことです。

 カンガルーケアによって、母親の赤ちゃんに対する愛着形成が進むとされるほか、母親が持つ正常な細菌叢(さいきんそう)が赤ちゃんに移ることで、赤ちゃんの雑菌に対する皮膚バリアーが作られるなどのメリットがあるようです。

 このカンガルーケアをめぐって近頃、英語圏のウェブサイト「Reddit」上である論争が起きました。

 日本の週刊誌報道によると、米国のある病院がカンガルーケア代を分娩費用とは別途、請求していたことが判明。カンガルーケア代は一般的に無料であるため、サイト上には、「お母さんが赤ちゃんを抱っこするのにお金を取るなんて」「病院だって大変なんだから仕方ない」など、さまざまな意見が掲出されました。

 オトナンサー編集部では、今回の論争の背景、そして、日本におけるカンガルーケアの現状について、産婦人科医の尾西芳子さんに取材しました。

“訴訟大国”米国では特に危険性が認識されている

 尾西さんは、今回の論争の背景に「米国人のコスト意識」があると指摘します。労働による拘束時間や、トラブルが起きた場合の責任について「きわめてシビア」な米国人は、カンガルーケアが病院スタッフの拘束を生じさせるため「純粋な対価」を求めたと考えられます。

 またカンガルーケアは、産まれたばかりの赤ちゃんの呼吸が安定せず、急に容体が悪くなって訴訟に発展する可能性も十分考えられるため、“訴訟大国”の米国ではことさら、リスキーなことと認識されているそうです。

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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