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母親の赤ちゃん抱っこが有料に? 海外で論争「カンガルーケア」、日本の現状は

日本の問題はカンガルーケア自体の拒否?

 こうした論争は今後、日本でも起こりうるのでしょうか。尾西さんによると、日本国内でカンガルーケアを行っている産婦人科は「だいたい6~7割くらい」。現状ではスタッフの人手が足りないため、断る病院も多いようです。

 ただし「論争が起こってもおかしくはありません」。その背景には、日本国内における医療訴訟の増加があるそう。日本でもすでに、カンガルーケアに関する訴訟が5件以上、起きているそうです。

 日本における医療訴訟はピークだった2004年(1110件)以降、減少傾向にあったものの、近年再び増加しており、現在は数百件の訴訟が提起されています。

 そのため、日本の医療者は「ビジネス的ではない心のこもったサービスを提供したい、という気持ち以上に、自分を守らなければならないと考え始めるでしょう」。尾西さんが警鐘を鳴らすのは、対価以前に、カンガルーケア自体を断る病院が増えることです。

 ちなみに、日本でカンガルーケアの対価を求める病院が現れた場合、どのような展開が予想されるでしょうか。

 尾西さんは「今回のように別途請求ということはないと思いますが、分娩費用は一括で請求されることが多いため、それに上乗せされる可能性があります」と話します。カンガルーケアには当然、保険は適用されません。

TPPは日本の産婦人科に変化をもたらすのか

 最後に、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加することで想定される、産婦人科を取り巻く変化について聞きました。

 尾西さんは「日本では、薬や医療機器などの価格は国が規制していますが、TPPに参加すれば、米国が規制撤廃を要求して自由価格制になり、薬や医療機器の価格が上昇するでしょう。その結果、『医療へのアクセス』が悪化し、現在と同等レベルの医療を提供できなくなるかもしれません」と話しています。

(オトナンサー編集部)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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