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「初めての環境」に大きな不安感じる“自閉症”の息子 入学式へ 母の不安払拭した、特別支援学校の粋なサプライズ

知的障害がある自閉症の息子を育てる女性ライターが、特別支援学校の入学式で経験した心温まるエピソードについて、紹介します。

将来の見通しが立たず、不安になる息子(べっこうあめアマミさん作)
将来の見通しが立たず、不安になる息子(べっこうあめアマミさん作)

 ライターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある10歳の息子と、きょうだい児である6歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

 子どもにとって、ドキドキとワクワクがいっぱいの新学期。特に入学を控えている子にとっては、緊張もひとしおだと思います。

 アマミさんによると、自閉症がある子は、初めての環境に苦手意識を持つことがあり、息子が特別支援学校に入学するときは不安でいっぱいだったといいます。そんな息子が、入学式で経験した心温まるエピソードについて、アマミさんが紹介します。

自閉症の子は見通し持てないと不安に

 自閉スペクトラム症(以下、自閉症)は、社会的なコミュニケーションの困難さのほか、空間や人、特定の行動に対する強いこだわりがあるなど、さまざまな障害特性が見られる発達障害の一つです。

 障害特性の中には、「変化に対する不安や抵抗」というものもあり、新しい場所や環境に極端な苦手意識を持ったり、ときにパニックを起こしてしまったりする人も多いです。

 私の息子には、重度知的障害を伴う自閉症がありますが、やはり彼も変化を嫌い、初めての場所では戸惑うことが多いです。初めての場所で、これから何が起こるか見通しが立たないために、不安になってしまうのでしょう。

 息子の場合はそういうとき、「固まる」「かたくなに一歩も歩こうとしなくなる」などの行動に出ることが多いですが、中にはパニックになって大声を出したり、息子とは逆にたくさん動いてしまったりする子もいます。

 いずれにしろ、子どもがそうなってしまうと親は大変ですし、何とかそんな状況を回避したいと思います。

年度替わりは不安定な息子

 自閉症がある息子にとって、変化が大きい年度替わりの時期は鬼門です。学年が変わるだけでも、人との出会いや別れがあり、教室も変わりますから、息子はいつもそんな変化を察知して、毎年3月くらいになるとソワソワし始めます。

 そのため、単に学年が変わるのではなく、卒園、入学を伴う、幼稚園から小学校への進学のときはかなり心配したものです。

 それまでの居場所だった、幼稚園や療育の場所からお別れし、大好きだった先生や友だちとも離れ、初めての場所、初めての人たちがいる環境に身を投じるわけですから、大変です。

 健常のお子さんでも不安が大きいと思いますが、障害がある息子のような子の場合は、親も子もすごくドキドキしていました。

学校側から「入学式の下見」の提案

 そんな中、息子が入学する特別支援学校から、「入学式の下見」のお誘いがありました。

「入学式の下見なんてできるんだ」と少々驚きましたが、願ってもない機会です。私は二つ返事でお願いし、息子と一緒に入学式の下見に出掛けました。

 下見に行ったのは、入学式の前日だったかと思います。入学式本番と同じように学校に行き、会場の体育館に行きました。

 体育館は、すでに本番用に、完璧に飾りつけが準備されていました。紅白の幕が張られ、たくさんのパイプ椅子が並んだ中に、息子と私がぽつん。息子は初めての体育館という広い空間に、圧倒されているようでした。

 たくさんの椅子が並んだ状況も、なんだか異様に見えたのでしょう。明らかにすみっこで挙動不審になっていました。

 そこに、先生がニコニコしながらやってきました。息子に声を掛け、「座ってみていいよ」と、促してくれました。

 最初は緊張していた息子も、先生のやわらかな雰囲気と慣れた対応に、徐々に安心していったのでしょう。最終的に、ちょこんと椅子に座ることまでできました。

 息子だけではなく、親の私も実は少し緊張していましたが、先生から学校の話や、入学式の流れなどを聞き、安心した気持ちで学校を後にしました。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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