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○○の家が燃えますように…絵馬に個人情報を書く行為に「怖すぎ」などの声、法的問題は?

「不倫した夫と△△の縁が切れますように」。絵馬に、こうした内容を個人情報とともに書く行為に法的問題はないのでしょうか。

絵馬に個人情報を書く行為、法的には?
絵馬に個人情報を書く行為、法的には?

「不倫した夫と△△の縁が切れますように」。絵馬に個人名を書いてプライベートな内容を暴露する行為について先日、ネット上で話題になりました。

 神社や、いわゆる「恋人の聖地」などの観光地では、男女が祈願をしたためた絵馬を見かけることがありますが、この絵馬に「不倫した夫と△△の縁が切れますように」「○○の家が燃えますように」「□□が早く死にますように」などの不適切な内容が名前や住所といった個人情報とともに書かれているケースがあるようです。

 絵馬は不特定多数の目につく場所に設置されることが多く、ネット上では、「怖すぎ」「個人情報はダメでしょ」「プライバシーの侵害では」「内容によっては罪に問われてもおかしくない」など、さまざまな声が上がっています。

 絵馬と個人情報を巡る法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

前科、病歴、身体の特徴、指紋などの情報も

Q.絵馬に個人が特定できる情報とともに不適切な内容を書き、多くの人の目に触れさせる行為に法的問題はありますか。

牧野さん「絵馬は、不特定多数の目につく場所に設置されることが多いので、ネット上のプライバシー権の侵害と同様に考えることができます。本人と特定しうるものであれば、個人のプライバシー権を侵害している可能性があります。

プライバシー権は、基本的には民事上の権利であり、同意なく自分のプライバシーを公開されない権利です。本人の承諾なく、個人情報(不倫の暴露など)を公開した場合には、プライバシー権の侵害となり、その人が受けた(精神的・経済的)損害を賠償する必要があります。

プライバシー権の侵害となる情報には、不倫の暴露のほか、日常生活や行動、前科、病歴、身体の特徴、指紋、住所、結婚、離婚などといった広汎な個人情報が含まれます」

Q.「家が燃えますように」などの脅迫的な内容はどうでしょうか。

牧野さん「『家を燃やします』の場合は『犯行予告』となるため、威力業務妨害罪(刑法第234条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にあたる可能性があります。『家が燃えますように』も、状況によっては犯行予告と解される可能性があるでしょう。

他方、脅迫罪(刑法第222条、2年以下の懲役または30万円以下の罰金)に該当する可能性も考えられますが、『○○の家が燃えますように』『○○が早く死にますように』の場合には、脅迫罪の成立に必要な『害悪の告知』には当たらないでしょう。

裁判例から、『君には厳烈な審判が下されるであろう』と告げるのは、害悪の告知に当たらないため、脅迫罪は成立しません(昭和45年10月28日名古屋高裁判決)」

Q.絵馬に書かれた内容によって何らかの不利益を被った場合、どのような法的手段を取ることができますか。

牧野さん「プライバシー権を侵害する個人情報の公開に対する精神的な損害(慰謝料)の賠償を請求することが可能ですが、数万~数十万円になることが多いでしょう。

他方、経済的な損害が発生する場合もあります。例えば、『絵馬で不倫を暴露されて取引先からの信用を失い、契約を解除された』などのように、絵馬のメッセージによって損害が発生したことを証明できれば、損害賠償を請求することができます」

Q.絵馬による秘密の暴露などで、過去の事例・判例はありますか。

牧野さん「絵馬による過去の事例・判例はありませんが、不倫など人の社会的評価を下げる事実を不特定多数の人が見られるようにした場合、それが真実であったとしても、名誉毀損になる可能性があります。

名誉毀損の場合は、民法709条の不法行為責任として損害賠償請求をされる可能性もありますし、悪質な場合には刑法230条1項の名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)に当たる可能性もあります。

なお、例え仮名(かめい)であったとしても、その人であると特定できる程度に事実が示され、それにより社会的評価を下げる場合には、名誉毀損に当たる可能性があります」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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