内定学生の「ビジネスマナー研修」に変革の兆し? 内面なき“型”は社員のためにならない
企業による、内定学生に対する投資の一つに「ビジネスマナー」の習得があります。しかし、通り一遍の「型」だけを教えても真のマナーは身につかない、と考える専門家もいます。
今年も10月1日に内定式を行った企業が多くありました。学生の就職活動をめぐっては、経団連の中西宏明会長が先日、「就職活動のルールを2021年春入社から廃止する」との意向を示したことが波紋を広げていますが、現在でも、多くの企業が早々と内定を出し、学生への投資を行っています。
そうした取り組みの一つが「ビジネスマナー」の習得ですが、近年、面接にリクルートスーツではなく普段の服装で来るよう指示する企業が現れたり、社員の服装自由の企業が注目されたりして、今までの「ビジネスマナー」が変革を迫られているにもかかわらず、マナーを教える側は通り一遍の「型」しか教えていない、と指摘する専門家もいます。
国内外のビジネスマナーに詳しく、マナーを軸としたオリジナルの研修手法による人材育成を行うマナーコンサルタント・西出ひろ子さんが解説します。
マナー基本5原則の「型」しか教えない
現在、入社前の内定者に、一通りのビジネスマナーの「型」を身につけてもらいたいという企業はたくさんあります。ビジネスマナー本を一人一人に配布したり、eラーニングで学ばせたりと入社前からコストをかけ、入社後に「人財」となって活躍してもらうための投資をしているのです。
企業側が、入社前に一通り身につけてほしいと思うビジネスマナーは、第一印象で相手に不快感を与えないための表情や態度、身だしなみに始まり、あいさつや言葉遣いです。これらを「マナーの基本5原則」といいます。5原則を入社前に学ぶのは良いことですが、実際に入社し、仕事をスタートさせた時、これらを「型」としてだけ身につけていても、それは本来のマナーとは言えません。5原則の「型」以前に社会人は「マナーとは何か」を知る必要があります。
多くの方は「ビジネスマナー」と聞くと、お辞儀の仕方や電話応対、名刺交換、来客応対などの「型」、すなわち、所作のことを想像しがちですが、マナーは「型」ではありません。「こういう時には、こうする」というのは、国際儀礼(プロトコル)として統一されている、ある種のルールであり、プロトコルとマナーは異なります。
また、国外の文献には、社会の中で守るべきルールとして「エチケット」がある一方、マナーは単なるルールではなく、「相手を慮っての行動様式」とあります。エチケットが「食べ方」「立ち方」「話し方」であるのに対し、マナーは「陰口を言わない」「年長者を敬う」「乱暴な話し方をしない」などとされています。
もちろん、日本でも、お辞儀の仕方や名刺交換の仕方にはある種の「型」はあります。しかし、ビジネスシーンにおいて「型」は相手や状況などに応じて変化します。つまり、「こういう時には、こうする」というルールとしての「型」がある、と言い切れないのがビジネスマナーなのです。
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