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高齢者が“最後まで住める”のは本当に「介護施設」だけなのか…松尾芭蕉に学ぶ「終の棲家」探しの基準

“終の棲家”を定めるのはごく当然のこと

 年を取れば、周辺環境もライフスタイルも変化し、身体機能も衰えてきます。そうすると、現役時代には何も感じなかったことが不便になったり、不安になったり、恐れや孤独や危険を感じたりすることが増えてきます。

 従って、高齢期にふさわしい環境を改めて考え、“終の棲家”を定めるというのは大事なことだと思います。それは、家族が増えたら部屋数の多い家を望み、仕事場に通うために駅の近くを望み、子どものことを考えて学区などを考慮したのと同じく、人生のいろいろな段階で住まいを変え、環境を整えるのはごく当然かつ賢明なことです。

 しかし、“終の棲家”探しのポイントが、「要介護になったら面倒を見てくれるか」でいいのでしょうか。

 松尾芭蕉は宗匠として、東京・日本橋を拠点に多くの俳人や弟子たちと交流しながら暮らしていました。しかし晩年、深川へ転居します。何不自由ない暮らしをしている著名な俳人は、なぜ街中から離れ、質素な家での1人暮らしを選んだのでしょうか。諸説ありますが、本当に自分らしく生きる、自分がやりたいことをやるためではなかったかと思います。人が寄ってきてチヤホヤされ、指導を含めて多くの人たちと関わり合いを持たなくてはならないような日常から離れ、自分らしく創作に生きるための環境をつくりたかったのでしょう。

 介護が必要な状態になるかどうか、その程度がどれくらいになるかは全く予見不可能であり、かつどこにいても、そうなればそれなりにサービスは受けられるので(それが「地域包括ケア」という言葉の意味です)、介護が手厚いかどうかは大した問題ではありません。それよりも、最後まで自分らしく、楽しく、イキイキと暮らせるのはどこかという基準で検討すべきだろうと思います。

 自分にとっての芭蕉庵はどこか。“終の棲家”探しは、そうありたいものです。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

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川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)、「老い上手」(PHP出版)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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