老いに「抗う」のではなく「適応する」…デンマークの高齢者に学ぶ「幸福な高齢期」を迎えるためのヒント
日本は「老いに抗う」、デンマークは「老いに適応する」…高齢者に関する研究活動を行う筆者は、この両者の違いに「高齢期の幸福」を考えるヒントがあると指摘します。

デンマークで提唱され、今では高齢期のウェルビーイングに関する基本的な考え方として、世界で広く支持されている「高齢者福祉の3原則」。(1)生活の継続性(2)自己決定(3)残っている能力の活用―の3つから成りますが、デンマークをはじめとする北欧の高齢者の高い幸福感は、この3原則の浸透や徹底によるものと言ってよいでしょう。
日本でも「高齢者福祉の3原則」はよく知られるところですが、その中で「生活の継続性」についてはやや誤解があると、高齢者に関する研究活動を行う筆者は考えます。「生活の継続性」が、“同じところに住み続けること”と理解されがちであるからです。「生活の継続性」とは、できるかぎり現役時代と同じような生活スタイルを続けるということであって、生活する“場所”には関係がありません。
例えば、家から1キロ離れたところに食品スーパーがあり、若い頃からそこで買い物をして料理をするというのが日常であったとします。しかし、年を取ると1キロを往復するのがだんだんとつらくなって、買い物に行かなくなる(だから料理もしなくなる)というようなことが起こります。これは、生活の継続性が低下している状態です。
他にも、仕事に毎日出かけたり、済ませないといけない用事があって頻繁に外出したりしていたのに、高齢になって家の近くには仕事も用事も、役割や居場所もなく、暇を持て余してしまうような状態は、それまでの生活が継続できていないということになります。
現役時代に、多少不便でも郊外に一戸建てを購入した人たち、あるいは、どんどん人口減少が進んでいる地方ではこのようなケースは多いでしょう。住み慣れた場所でも、年がたつと、自分も周辺も変化するのは当然で、それによって、若い頃と同じような生活スタイルが継続できなくなってしまう。同じところに住み続けることによって、かえって生活の継続性が失われるということです。
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