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警察の少年係は「秋」が忙しい 非行、妊娠…夏休みに羽目を外した子どもたち

ひと夏の恋で妊娠

 万引きや暴力といった犯罪行為も問題ですが、未成年の人間関係の変化で避けて通れないのが、やはり「性」にまつわる問題でしょう。特に女子の場合、心身や将来に大きく関わることだからです。

 高校1年生のミナ(15歳、仮名)は、「友達の男子に襲われた」と泣きながら私のところに相談にやって来ました。

 3月まで同じ中学だった男子生徒と地元のお祭りで再会。LINEを交換してやり取りするうちに一緒に遊ぶようになり、自室に招いた結果、押し倒されたというのです。

 正直なところ、年頃の男子と仲良くLINEのやり取りをして、ベッドのある部屋で2人きりになったら、ある瞬間から「そういうこと」になると分かりそうなものだと思うのですが、ミナにとってはどうやら本当に想定外の出来事だったようです。「付き合っていない」「友達だと思っていたのに」と泣きながら訴え続けていました。

 男子生徒はミナの抵抗を受け、おとなしく引き下がったため、“未遂”で終わったそうです。ミナには、同世代の男子の性欲や、閉じた空間で異性と2人きりになることのリスクについて、ゆっくりと教えさとすことになりました。

 実は、ミナのように性に無防備な女子生徒は珍しくありません。私は、学校に招かれ、10代の学生を相手に性について講演をしたり、相談を受けたりする機会も多いのですが、「自分が受けるリスクを理解できていない」女子が非常に多いことを実感しています。

 その結果、実際に妊娠してしまうケースもあります。

 ユウコ(17歳、仮名)は、夏祭りで「浴衣姿がかわいい」と声をかけてきた大学生と恋に落ち、新学期が始まって少ししてから妊娠が判明しました。

 当初は「まさかこんなことになるとは思わなかった」「どうしよう」と繰り返すばかりでしたが、勇気を出して親に説明し、その後、教師や相手家族と話し合いを重ねた結果、出産を決意。相手の学生も大学を中退し、2人で家庭を築く道を選びました。

 今は、かわいい女の子の子育てを頑張っています。若くして懸命に子育てをする彼女は本当に立派ですが、せっかく進学した学校を中退し、教師になりたいという夢を諦めたこともまた事実です。

取り返しのつかない事態を防ぐために

 保護者の方には、「子どもが今、どんな人と関わっているのか」に気を配っていただきたいと思います。どこに行くのか、何時に帰ってくるのかも大切ですが、何よりも大切なのが「誰と」です。「塾へ行っているから安心」ではなく、「塾でどんな友達と関わっているのか」に関心を持ってください。子どもは大人以上に、良くも悪くも人間関係の影響を受けやすいからです。

 子どもの行動を1から10まで把握して「管理」しようとする必要はありません。そんなことをすると、子どもは反抗して、親に隠し事をするようになるため、逆効果です。無理に聞き出そうとしたり、急に改まって話したりするのも、子どもが構えてしまうのでやめましょう。

 日頃から、何気ない会話の中で、「今日はどんなことをしたの?」「誰とLINEしてるの?」などと話しかけることが大切です。普段から子どもの様子を見ていれば、「あれ? 何かおかしいな」と、ちょっとした変化にも気付くはずです。

 もし何か気になることがあっても、頭ごなしに子どもの考えや行動を否定するのではなく、いったん「待つ」姿勢を見せましょう。そうしたコミュニケーションの積み重ねによって、子どもが「親に相談してみよう」という選択をしやすくなり、いざという時の危機回避につながるのです。

 ちょっとした好奇心や出会いが、子どもの将来を大きく変えてしまうことがあります。しかし、子どもたち本人がそれを実感して理解するのは難しいことです。だからこそ、日常的な家族のコミュニケーションが大切なのです。

(文/構成・ライフスタイルチーム)

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上條理恵(かみじょう・りえ)

少年問題アナリスト

少年問題アナリスト、元上席少年補導専門員、東京経営短期大学特任准教授。小学校、中学校、高校講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。小中学生、高校生、大学生、保護者、教員に向けた講演活動は1600回以上に及ぶ。

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