矯正は苦痛? それでも練習すべき? 子どもの「左利き」に親はどう接するべきか
「左利き」の子どもについて話題となっています。子どもが左利きだと気づいたら、どのように対処するのがよいのでしょうか。

「左利き」の子どもについて先日、SNS上で話題となりました。子どもの場合、おもちゃやスプーンなどを手に取るようになるうちに、少しずつ利き手の傾向が分かってきますが、「左利きには理不尽なことが多いから、右を使えるように練習してよかった」「部活で右投げを強制された」「子どもの頃、無理やり矯正させられて苦痛だった」など、さまざまな体験談が寄せられています。
パプリカ学習帳(ペンネーム)さんが投稿した、左利きと右利きを比較したイラストも話題となっていますが、我が子が左利きだと気づいたら親はどのように接するべきでしょうか。20年間にわたって学習塾を経営し、著書に「おうちレッスン きれいにかけるひらがな」(新興出版社啓林館)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんが、具体例とともに対処法を紹介します。
利き手は個性の一つ
日本人は圧倒的に右利きが多く、左利きの割合は人口の約10%と言われています。我が子が左利きだと気づいた時、右利きに直すかどうか迷う親御さんも多いことでしょう。
結論として、必ず右利きに直すべきだということはありませんが、製品やシステムなど、社会のあらゆる場面に「右利き用」があふれていることは無視できません。例えば、医師が使う手術道具も右利き用です。
日常生活の中で左利きの人が直面する「不便」には、次のようなものがあります。
・カメラのシャッターボタンは右にあるため、押しづらい
・ハサミ、包丁、横口レードル(スープ用おたま)は右利き用に作られているため、使いづらい
・急須や缶切りが使いづらい
・駅の自動改札機は切符投入口が右側にあるため、通りづらい
・パソコンのテンキーは右にあるため、使いづらい
こうしたことから、社会生活での利便性を考えると、できれば右と左の両方を使えるようになることが理想的でしょう。その場合、ハサミやボール投げは左のままでも、筆記は右で習慣づけておく方がよいかもしれません。
なぜなら、中でも不便を感じやすいのが「書くこと」だからです。文字の筆順は「左から右」が基本ですが、これは右利きの人に合わせて作られたルールです。左利きの場合は「右から左」に書いた方が書きやすいのですが、「左利きの人は筆順を逆に書いてもよい」ということにはなっていません。
また、左利きの人は、書いている文字が自分の手に隠れて見えづらくなってしまうため、鉛筆の持ち方が不自然になってしまいます。
筆記を右利きへと上手に誘導するポイントは「左手で書いちゃだめでしょ!」と叱らないことです。まずは左手で書けることをしっかりと褒めてあげましょう。「左手で字が書けるなんてすごいね! ママには絶対まねできないよ」「右手でも書けるようになったら、両手を使えてスーパーマンみたいでかっこいいね」などと声をかけ、「もう左手で上手に書けるようになったから、次は右手で書く練習もしてみよう」と誘導すると、子どものやる気をうまく引き出すことができます。
ただし、既に左手で文字を書くことが定着している場合、右手で書く練習を苦痛に感じてしまうことがあります。その場合は、無理に直さない方がよいでしょう。子どもにとってはストレスとなり、文字を書くことが嫌いになるだけでなく、ひいては勉強嫌いになるなど、将来に関わるさまざまな問題が出てくるからです。
利き手は子どもの個性の一つです。社会生活を送る上で利便性の差はあれど、右利き・左利きに絶対的な良し悪しはありません。右利きに直したいと考えている親は「絶対に右利きに」ではなく「両手が使えたらより便利」という柔軟な感覚で、子どもに接してあげるとよいでしょう。
(文/構成・ライフスタイルチーム)
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