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子どもが「文字」の練習を嫌いになってしまう5つの“誤”指導法

幼稚園や保育園で30年間、4〜5歳児に平仮名を教えた筆者が、子どもが文字の練習を嫌がるようになってしまう5つの指導法を紹介します。

(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

 子どもは4~5歳になると、文字を書くことに興味を持ち始めます。私は専任講師として30年間、幼稚園や保育園で4~5歳児に平仮名を教えていましたが、その中で、子どもが文字の練習を嫌がるようになってしまう、いくつかの指導法が分かりました。

第5位「比べる」

 保育園や幼稚園の壁面に、子どもの書いた文字を掲示していることがあります。わが子のものと他の子のものとを見たとき、絵の場合はたとえどんな絵でもニコニコして見ていられるのに、字になった途端、「どうしてお友達のように書けないの」と焦ってしまいます。しかし、比較は禁物です。決められた枠の中に書けていたら、それだけで褒めましょう。

第4位「飽きるまで書かせる」

 無味乾燥な文字の練習を、子どもが「これ以上やりたくない」と飽きるまでやらせないようにしましょう。そのためには、「もう少し書きたい」というところで切り上げて「続きは明日ね」と言った方がよいのです。子どもが「もっと書きたい」とせがんできても「はい、おしまい」と区切りをつけて終わらせれば、明日の文字の練習時間が待ち遠しくなります。

 それに、文字は「毎日」「短時間」練習することで上達します。1日5分以内がよいでしょう。テスト勉強で一夜漬けしたものはすぐに忘れてしまいますが、毎日短時間、反復したものは覚えているのと同じですね。

 また、大人は「たくさんの量を書かせれば、そのうち上手になるだろう」とつい考えてしまいますが、たくさん書かせるのもNGです。平仮名はたった46文字しかありませんが、大人の読む文章の7割程度を占める上、一生書いていくものです。ただプリントを埋めることだけを目的にしてしまうと、雑に書く悪い癖がついてしまいます。量より質で、ゆっくり丁寧に書くことが優先です。

 小学校の先生の中には、算数の計算ドリルのように文字書きのときも「よーいドン」とスタートして制限時間を設け、プリント1枚をこなすことを目的にさせる先生がいますが、文字の練習は運動会の徒競走とは違います。「どんな文字でもいいから、速く、たくさん書けばいい」ことにしてしまうと、書けば書くほど雑な文字が定着してしまいます。

第3位「『カエルの“か”』と書かせる」 

(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

 口頭だけで「カエルの“か”を書きましょう」というと、子どもは「か」ではなく「カエルそのもの」を頭に思い浮かべます。「“か”がイメージできるだろう」と考えるのは大人の思い込みで、子どもは「お尻の“お”」と教えてもお尻の絵を描きたくなります。このような場合は「○える(カエル)」「○さぎ(うさぎ)」のような「穴埋め形式」のドリルを用いるのがよいでしょう。

 また、「あ・あ・あ・あ」「い・い・い・い」「う・う・う・う」…このような意味のないことを書いていても、子どもはちっとも楽しくありません。子どもが興味を持っている「いぬ」「ねこ」「りんご」「でんしゃ」といった“言葉”を書かせましょう。これも、先述の穴埋め形式のドリルが活用できます。

第2位「消しゴムを使わせる」

 消しゴムを使うことは、自分で書いたものを否定する行為です。真っ白な紙の上に新しく書くのとは異なり、消した後に上から書くと紙が汚くなります。消しゴムを使わなければ、前に書いた文字との比較ができ、「さっきよりもうまく書けたな」と自らの進歩に気付くこともできます。フランスでは、子どもたちに消しゴムを使わせないそうですが、間違いを消さないことは大切です。

第1位「添削する」

左は添削した例、右はカラフルなペンで丸を付けた例(立石美津子さん提供)
左は添削した例、右はカラフルなペンで丸を付けた例(立石美津子さん提供)

 次の2枚の用紙は、どちらも正解率は全く同じものです。「ほ」が書いてありますが、中央の1文字以外は、右の部分が“ま”のように突き出る間違いをしています。まだ手先を器用に動かせないのでしょうか。中央の文字は、たまたま突き出ないで書けたのかもしれません。

 このとき、誤った文字を真っ赤に添削する先生がいますが、子どもはひどく嫌がります。子どもは頭では分かっていても、大人のように手先がうまく動かせないので、上手に書けないこともあるのです。

 私は今まで多くの子どもたちに指導をしてきましたが、真っ赤に添削されて「こんなに間違えたんだ。今度は直されないように頑張ろう!」と奮い立つ子に一人も出会ったことがありません。「添削」は教師にとっては大切な作業ですが、過度に行うと子どもの意欲を摘み取りかねません。では、添削をせずにどう教えればよいのでしょうか。

 こんなときは最も正解に近い文字を選び、カラフルなペンで丸を付けます。赤は攻撃的な色なので使いません。「ここが突き出ないように書くのは難しいけれど、これは成功したね」と、なぜ丸を付けたのかを伝えます。そして、間違っている文字は無視します。すると、子どもは喜んで丸をもらった字を練習するようになります。

 もしくは、子どもに「自分が書いた文字の中で『一番きれいだな』と思う文字に丸を付けて」と伝えるのもよいでしょう。つまり、自己採点させるのです。案外、子どもも正しい選び方をしますよ。子どもの側の気持ちになってみると、「大人からされて嫌なこと」が見えてきます。せっかく書くことに興味を持ち始めたのならば、その芽を摘まないようにしましょう。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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