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飲酒で顔が赤くなる人、ならない人の違いは? 医師に聞いてみた

お酒を飲むと、すぐに顔が赤くなる人もいれば、まったく顔色が変わらない人もいますが、なぜなのでしょうか。医師に聞きました。

お酒を飲むと顔が赤くなる人、ならない人の違いは?(写真はイメージ)
お酒を飲むと顔が赤くなる人、ならない人の違いは?(写真はイメージ)

 お酒を飲むと、すぐに顔が赤くなる人もいれば、まったく顔色が変わらない人もいます。飲酒時に顔が赤くなる人とならない人は、何が違うのでしょうか。原因や注意点について、在宅医療の動画研修プログラム「Dr.そうすけの在宅キャンプ」の監修医で「Aiクリニック」を運営する、医師の飯塚聡介さんに聞きました。

アセトアルデヒドが原因

Q.そもそもお酒を飲むと、体内に入ったアルコールはどのように代謝されるのでしょうか。

飯塚さん「体内に入ったアルコールは、肝臓にある『アルコール脱水素酵素(ADH)』という酵素によって『アセトアルデヒド』という物質に分解(酸化)されます。その後、アセトアルデヒドは細胞内に存在するミトコンドリアに運ばれ、『2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)』という酵素によって酢酸に変換され、最終的に水と二酸化炭素になります」

Q.では、お酒を飲むと顔が赤くなることがあるのは、なぜなのでしょうか。飲酒で顔が赤くなりやすい人の特徴も含めて、教えてください。

飯塚さん「お酒を飲むと顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドが原因といわれています。アセトアルデヒドは有毒で血管を拡張させる作用がありますが、この血管拡張作用により、顔の血流が増加し顔が赤くなる現象、いわゆる『フラッシング反応』が起こります。そのため、飲酒で顔が赤くなりやすいかどうかは、先述のADHとALDH2という2つの酵素の働きが関係しています。

アセトアルデヒドを酢酸に変換するALDH2は、遺伝子による個人差が多くなっています。例えば、父親か母親のどちらかの染色体に酵素活性があるタイプである、ALDH2のヘテロ欠損型の人は、飲酒は可能ですが、顔が赤くなりやすいのが特徴です。また、父親と母親の両方の染色体に酵素活性がない、ALDH2のホモ欠損型の人は、お酒を全く飲めない(下戸)ということになります。

こうした遺伝子を持つ人は東アジアに多く、日本人だと3~5割の人が該当します。同じ人種や家族内でも個人差があるため、一概には言えませんが、日本人を含むアジアの人々は、お酒に弱く顔が赤くなりやすいです。遺伝的な差によって生じるため、飲酒で顔が赤くなりやすい人を外見で判断することは困難でしょう」

Q.お酒を飲んでも顔が赤くならない人がいますが、なぜなのでしょうか。

飯塚さん「肝臓の代表的な酵素であるADHの働きの強さが関係しています。ADHは、『1A』『1B』『1C』の3種類で、アルコールを代謝するときに使われます。

例えば、ADH1B(1B型アルコール脱水素酵素)には遺伝子多型があり、日本人の5~7%はアルコールの分解が遅いタイプのADH1Bを持っています。非アジア系民族の場合、90%以上の人がこの型の酵素を持っています。

アルコールの代謝が遅いタイプのADH1B酵素を持つ人は、アルコールの代謝が速い人に比べて、肝組織のADHの活性値が5分の1程度しかありません。このタイプの人が飲酒するとアセトアルデヒドをゆっくり産生するため、顔面紅潮や動悸(どうき)、吐き気、頭痛などの不快なフラッシング反応が起きにくいです。アルコールを酸化できないため、アセトアルデヒドに変換されにくいということです。

その代わり、このタイプの酵素を持つ人は顔が赤くなりにくい一方、アルコールが酸化されず体内に蓄積されやすいため、アルコールの血中濃度が長時間高い状態が続きます。そのため、人によっては酩酊(めいてい)感が生じるほか、調整能力の低下や反応が鈍くなるなどして、寝てしまうケースがあります。この場合、顔が赤くなりにくいものの、酒に弱いタイプと言えます。

また、比較的酒に強い人が多量に飲んでしまった場合、翌日も酒臭いことが多く、アルコール依存症になりやすい傾向にあります。日本のアルコール依存症患者さんの約3割がこのタイプに該当します。

ちなみに、ADHとALDH2の分解酵素がともに強く活性していると、アルコールをどんどん代謝し、アセトアルデヒドがたまらないため、顔は赤くならず、酔いにくいです。つまり、このようなタイプの人はお酒をたくさん飲むことができます」

Q.「昔は顔が赤くならなかったのに、最近、赤くなりやすくなった」「顔が赤くなるときとそうではないときがある」といったケースもあるようですが、その場合、どのような原因が考えられますか。

飯塚さん「こうしたケースについては、酵素の活性が関係しています。アルコールは、肝臓の細胞質でADHによってアセトアルデヒドに分解されますが、この分解酵素の強さは年齢に応じて変化します。酵素の働きは加齢とともに低下していく傾向にあるため、年を取れば取るほどお酒に弱くなるのが一般的です。

しかし、他の疾病を合併していて治療を受けている場合は、治療が酵素を誘導することが知られています。その結果、お酒に強くなる現象が認められます。反対に、治療の終了や中止によって酵素誘導が終わり、アルコールの分解能力が低下することも知られています。

飲酒が習慣となった場合、ADHのもう1つのアルコール分解酵素群の『ミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)』では、特に『チトクロームP4502E1(CYP2E1)』と呼ばれる酵素が増えていきます。

習慣的にお酒を飲むようになったことでアルコールに強くなる主な理由は、脳での耐性が進み、アルコールが効かなくなるためですが、もう1つの理由はCYP2E1の量が増えてアルコール代謝が速くなるためとされています。

ADHは、ほろ酔い濃度で酵素の働きが最大になりますが、CYP2E1の働きは酩酊濃度(1mg/mL以上)で最大になります。つまり、日頃からお酒を多く飲んでいる人は、酩酊濃度になったときにアルコールの分解速度が速くなります。

しかし、CYP2E1は数日の休肝日を設けることで量が減り、お酒を1週間飲まなかった場合、お酒を多く飲む前の水準に戻ってしまいます。このように、アルコール代謝の速度が速くなったり遅くなったりします。

アルコールは一種の化学物質のため、耐性が上がる場合も下がる場合もあり、その多くは加齢と酵素誘導による場合が多いと考えられています。

このほか、内服薬の中にはアルコールとの飲み合わせが非常に悪いものがあり、同時に摂取することで極度の吐き気を引き起こすケースがあるのが知られています。一方、この作用を利用してアルコール依存症を治療するための薬もあります」

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飯塚聡介(めしつか・そうすけ)

医師

在宅医療の動画研修プログラム「Dr.そうすけの在宅キャンプ」の監修医で「Aiクリニック」の院長。在宅医療に携わって13年。Aiクリニックでは年間1万件の訪問実績がある。日本内科学会総合内科専門医/医学博士。Dr.そうすけの在宅キャンプ(https://zaitakucamp.jp/)。

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