「あのー」「えっと」は使うべきでない? コミュニケーションにおける「フィラー」の役割とは
「あのー」「えっと」「まあ」「あのね」などの言葉を「フィラー」と呼びます。対人コミュニケーションにおけるその役割や効果的な使い方とは、どのようなものでしょうか。

普段、会話の中で、「あのー」「えっと」「まあ」「あのね」などの言葉を何気なく使っている人も多いのではないでしょうか。
こうした無意識の「言葉の癖」について先日、ネット上で話題になりました。「フィラー」と呼ばれるこれらの言葉について、コミュニケーションを円滑にするという声がある一方、言葉に詰まった時の言いよどみの表現であり、スマートな印象が損なわれる、という意見もあります。
これについて「しゃべる時『あのー』と言う癖がついてしまっている」「すぐ『えっと』って言っちゃいます」「緊張している時はフィラーを口走りやすい気がする」など、さまざまな声が上がっています。コミュニケーションにおけるフィラーの効果について、心理カウンセラーの小松原幸恵さんに聞きました。
話し手の心的状態が伝わる
Q.そもそも「フィラー」とは何でしょうか。
小松原さん「フィラーとは、『ええと』『あの』『まあ』など、発話の合間に挟む表現のことです。言語学や心理言語学、認知科学、コミュニケーション研究及び人間工学など、さまざまな点から研究されており、言葉そのものに概念的な意味はないものの、必ずしも『意味がない』ものではありません。対話では、フィラーによって、広い意味での話し手の気持ちなど心的状態を推測できることが分かっています」
Q.フィラーの働きについて教えてください。
小松原さん「フィラーは言葉や状況ごとにさまざまな働きをしており、一概に述べることはできませんが、一例として『あのー』『えーっと』は、自分が『今考えている最中である』ことを相手に知らせる効果を持つと言えるでしょう」
Q.フィラーを発する人の心理とは。
小松原さん「話し手としては『一度に多くの情報を表出することができないので、フィラーを頻出することで情報処理の時間を稼いでいる』『先行発話を受けつつ次への展開をスムーズに誘導するという調整機能を果たす』『話の流れを一応は受け入れつつ、小さな転換を図ることによって、談話をコントロールしようという意識が働く』などの心理が働いていると推測されます」
Q.フィラーを発しやすい人/ほとんど発しない人の特徴は。
小松原さん「人が言葉を話す時には、まず言葉にならない『思いや感覚』が浮かび、次に、知っている『知識や言葉』にその思いや感覚を当てはめ、言葉を形成して発声しています。それに加えて、自分自身でその言葉が正しいか、適切かを確認しながら話している場合もあります。
フィラーをほとんど発しない人というのは、『自分の考えや思いを迷うことなく言語化できる人』『フィラーを発さずに話す訓練をした人』と言えるでしょう。また、行き過ぎると『思ったことを考えなしに発言する人』という場合もあるでしょう。
逆に、フィラーを発しやすい人は『慎重に言葉を選ぶ人』『気を使いながら話をする人』『自分の心情を表現する言葉が分からない人』と言えます」
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