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アバターと“結婚”した米国人男性も…AI進化が世界にもたらす光と影

生身の人間が不要に?

 先述のロイターの記事で、「リリー・ローズ」に恋をした男性は、ポリアモラス(複数性愛主義者)を自称し、一夫一婦主義の女性と結婚していることから、その不満を解消する手段として、アプリは重宝していたと述べています。また、「彼女と私の関係は、現実の妻との関係と同じくらいリアルだった」とも語っています。

 つまり、彼は精神の安定のためにアプリのキャラクターとの安全な不倫関係を望んだのです。これも、先述のシェリー・タークルが指摘した「穴を埋めたい」という願望の一種なのでしょう。

 例えば、マッチングアプリで相手を探す場合、相手が「人」であるため、期待外れやトラブルだけでなく、自らの容姿や言動をさらすリスクを伴います。しかし、AIコンパニオンには、そのようなミスマッチはもともと存在せず、理想のパートナーが手に入ります。

 以上を踏まえると、近い将来、他人との比較競争に消耗したり、人間関係などを損得勘定優先で処理する生存競争に疲弊したりした人々にとって、今後さらなる進化を遂げる対話型AIは、唯一のオアシスとなるかもしれません。

 これは実のところ、AIによる偽情報の拡散や雇用危機よりも遥かに重大な変化を引き起こす可能性があります。生身の人間関係のコスパが悪いとなれば、「AIフレンドでよい」となりかねないからです。それが流行という社会現象のレベルに達すると、家族形成などへの入り口である関係づくりを放棄し、AIとのコミュニケーションに自閉する未来像も視野に入ってくるでしょう。

 もちろん、対話型AIには、物理的な身体がないため、倒れたときに助け起こしてもらったり、悲しいときにハグしてもらったりすることは不可能です。しかし、これほどまでに情報空間でのコミュニケーションに偏重した時代を生きているからこそ、AIチャットボットの需要が年々増大しているのもまた事実なのです。

 むしろ自問しなければならないのは、現実空間でのコミュニケーションを軽視しつつある私たちのライフスタイルの方なのかもしれません。

【参考文献】
(※1)アングル:AI対話アプリが性的会話停止、「失恋」嘆く利用者/2023年3月21日/Reuters

(※2)「つながっているのに孤独 人生を豊かにするはずのインターネットの正体」(シェリー・タークル著、渡会圭子訳、ダイヤモンド社)

(※3)Two is better than one: Social rewards from two agents enhance offline improvements in motor skills more than single agent/2020年11月4日/PLOS ONE

(評論家、著述家 真鍋厚)

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真鍋厚(まなべ・あつし)

評論家・著述家

1979年、奈良県生まれ。大阪芸術大学大学院修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。著書に「テロリスト・ワールド」(現代書館)、「不寛容という不安」(彩流社)、「山本太郎とN国党 SNSが変える民主主義」(光文社新書)。

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