キラウエア火山、人的被害が出ない理由 日本の火山との違いは? 現地ツアーガイドに聞く
5月3日に発生した米ハワイ島・キラウエア火山の噴火。溶岩流が住宅街を襲う映像は衝撃的ですが、住民に人的被害は出ていないようです。その背景には、日本とハワイの火山の違いがある、と現地ツアーガイドは話します。
日本人観光客にも人気の高い米ハワイ島で5月3日、世界遺産でもあるキラウエア火山が噴火し、溶岩流が住宅街を襲う映像がニュースで繰り返し流されています。自然の脅威を感じる映像ですが、一方、住民たちは無事避難し、人的被害の報告はないようです。日本の火山とハワイの火山には違いがあるのでしょうか。「ハワイ島の溶岩はカタツムリより遅い」と語る現地のツアーガイドに聞きました(日時はいずれも現地時間)。
日本人にも人気のある観光地
キラウエア火山はハワイ島東部にあり、「ハワイ火山国立公園」として世界遺産にもなっています。現在も活動を続ける一方、観測施設や観光施設が整い、自然の脅威を間近で感じられる観光地として日本人にも人気です。
今回の噴火は、最近活動が盛んだった火口から離れた住宅街で起こり、マグニチュード6.9の地震も起きたため大ニュースとなったようですが、一時全面閉鎖された国立公園も、一部再開したそうです。
今回話を聞いたのは、現地でツアーガイドを長年務めている和田義治さん(54)です。「和田タイチョー」の愛称で、キラウエア火山などの案内をしています。
Q.キラウエア火山は、噴火を続けているのが特徴だったと思いますが、今回の噴火は通常とは違う大規模なものだったのですか。
和田さん「規模は大きくはないのですが、ここ35年ほど噴火していた『プウオオ火口』から20キロ以上離れた場所での噴火でした。しかも、そこが住宅街だったので大騒ぎになったのです」
Q.噴火前後の様子を教えてください。
和田さん「4月30日午後、プウオオ火口で崩落や火山灰が観測されました。5月1日には、今回噴火した『レイラニエステート』地区を含む地域での噴火に警戒するように、ハワイ火山観測所が発表し、2日には道路で地割れが見つかりました。一部の道路が閉鎖され、自主避難を始める住民もいました。3日午後5時ごろ、ついにレイラニエステートで噴火が始まりました。道路などの地割れからマグマが噴き出したのですが、噴火は約2時間で、溶岩は10メートルほど進んで止まったそうです」
Q.日本では火山の噴火で多数の犠牲者が出たことがあります。今回、人的被害は報告されていないようですが、ハワイ島の火山は何が違うのですか。
和田さん「ハワイ島の火山の溶岩はサラサラで粘り気はないものの、土地の傾斜も緩やかなので、非常にゆっくりと溶岩が流れます。時速数十センチから数メートル、『カタツムリより遅い』と言ってもよく、余裕を持って避難できます。水分も少ないため、水蒸気爆発も起きにくいのです。火山灰も出にくく、健康被害の出る場所も限定的です」
Q.地元の人はどう感じているのでしょうか。
和田さん「1983年から毎日続いてきたキラウエアの噴火は、地元民にとっては日常です。『いつかこんな来る日が来るかもしれない』と思いながら、噴火のリスクの高い、安い土地を買って住んでいる人もいます。今回の地域は、いつ噴火してもおかしくない場所だったので『とうとうペレ(火山に住むといわれる女神)が土地を差し出せと言ってきたか。今まであなたの土地を貸してくれてありがとう』と思っているのでは」
Q.マグニチュード6.9の地震もありましたね。
和田さん「5月4日の正午すぎ、車でのツアーの最中に起きました。突き上げるような揺れから始まり、波の上のような揺れが続きました。ただ、お客さんは冷静でした。日本人はあの程度の地震では悲鳴を上げませんね」
Q.ハワイ島の観光はどうなっていますか。キャンセルが出ていませんか。
和田さん「一時、全面閉鎖されたハワイ火山国立公園は、一部再開しました。被害地域の周辺以外は噴火の影響はなく、空港周辺やヒロ、コナ、コーヒー農園、アカカの滝、ワイピオ渓谷などの観光地は普段と同じです。心配なのは風評被害で、まだキャンセルはありませんが、問い合わせは来ています。ツアーでは危険な所には行きませんので、安心してハワイ島の大自然を味わってほしいですね」
和田さんのツアーを何度も利用している「火山通」のリピート客からは「大噴火したから見学したい」という問い合わせもあるとのこと。もちろん、自然が相手なので、最新の情報を入手したり、現地のガイドの注意を聞いたりすることは大切ですが、過剰に恐れる必要はなさそうです。
(報道チーム)
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