モラハラ夫から逃れた50代女性…「私物回収」阻む嫁ぎ先の“復讐”〜実録・ボディーガード体験談
形見の着物を隠され…「110番通報します」
A子さんの私物は、1カ所にまとめておく約束だったそうです。しかし彼女は、「あいつ(夫)はむしろ、隠すと思います」とタクシー内で言っていました。もし、そうなったときは家の中を探す必要があるので、警護が必要だったのです。母屋の玄関に置かれていたのは、大きめのスーツケースと、紙袋が2つ。夫が言うには、「君の物は全部そこに置いたよ」とのこと。中身を確認すると、1つを除いてほぼそろっていました。
「着物はどこですか?」と尋ねたA子さんに対し、夫は「他に君の物はないよ」と言い放ちました。後ろでは、しゅうとめが薄ら笑いを浮かべています。ちなみに、家のパワーバランスは、しゅうとめがトップだそうです。A子さんの表情が、みるみる険しくなります。
「母の形見の着物です! ないわけがないじゃないですか!」
誰も、A子さんのそのようなけんまくを見たことがなかったのでしょう。家族が初めて表情を変えました。特に夫は、奥さんに気おされるなど、考えもしなかったのでしょう。笑顔のまま引きつっていました。
しかし、バツが悪かったのか、「だったら自分で探せばいいんじゃないの?」と言い返します。「ただし、他人は上がってくれるな。家に入るならA子一人で」と付け足しました。もちろんそう言われたら、われわれは勝手に上がることはできません。「本当にひどい…」と、A子さんは涙を浮かべていました。
A子さんがここに来た目的は「母親の形見の着物」だったのです。それは向こうも承知しています。無意味なことをする人間性は理解できませんが、せめてもの復讐(ふくしゅう)なのでしょう。もちろん、彼らが隠した証拠はありません。しかし、故意に隠したのであれば、少なくとも今は攻撃しないとも推測できます。精いっぱいの嫌がらせが、それなのですから。
ただし、ここで探すのを諦めては、来た意味がありません。私は「このままでは、らちが明かないので110番通報します」と告げました。もちろん警察を呼んだところで、どうにもならないでしょう。そもそも、われわれに上がり込む権利はないので、逆に警察を呼ばれてもおかしくありません。それでも通報をにおわせたのは、後ろめたい人間にとって、警察の介入は心理的な揺さぶりになるからです。深刻な事態を実感させられるため、通報をにおわせるだけでおとなしくなる相手は結構います。もちろん通じないこともあります。つまりはダメ元です。
夫も、「呼びたきゃ勝手に呼べばいい。こっちは何も困らん」ともっともなことを言いました。しかし、しゅうとめがそれを止めたのです。「こっちへいらっしゃい」と、夫を見えない所に連れていきました。3~4分して戻ってくると、「そこまで言うなら上がって構わないが、勝手に動き回らないでくれ」と、夫がふてくされた顔で言いました。警察が来ると困る事情がしゅうとめにあったのか分かりませんが、家に入る許可は得ました。
ただし家族の視線は、われわれの一挙手一投足にべったりと注がれています。7人で後を付いてくるのです。昼間でしたが、薄暗い室内と相まって、緊張感がありました。暴力の可能性は低い状況ですが、油断はできません。
その不気味な空気の中で、やはり目立っていたのは夫です。やたらと近づき、A子さんに話し掛けてきました。しかも隙あらば、A子さんに密着しようとします。ちなみに、話し掛ける内容は、「僕も手伝うよ」「ここも探した方がいいよ」「段差に気を付けて」など無意味でしたが、他の家族が静かにわれわれを見つめるのに対し、彼の作り笑顔と猫なで声が、ひどく不快でした。

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