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「犬がブドウを食べると、死んでしまうこともある」って本当? レーズンは? 獣医師に聞く

「犬がブドウを食べると中毒症状が起きることがあり、死んでしまうこともある」とのネット情報がありますが、事実でしょうか。獣医師に真偽を聞きました。

「犬にブドウ」はNG?
「犬にブドウ」はNG?

 ブドウが青果店やスーパーに並ぶ時期ですが、「犬がブドウを食べると中毒症状が起きることがあり、死んでしまうこともある」とのネット情報があります。事実でしょうか。事実であれば、どのような症状が出て、どんな点に気を付けるべきなのでしょうか。ガイア動物病院(東京都杉並区)院長で獣医師の松田唯さんに聞きました。

急性腎障害が起きる可能性

Q.「ブドウを犬が食べると、中毒症状が起きることがある」というのは事実でしょうか。事実であれば、どういった症状が起きるのでしょうか。

松田さん「事実です。ブドウ中毒の実態は『急性腎障害』です。急性腎障害は、何かしらの原因で腎臓にダメージが入ることで起こります。症状としては、嘔吐(おうと)や下痢、ご飯の食べが悪い、元気がないといった、原因の特定が難しいものが一般的となっています。

たくさん水を飲む、おしっこの量が多いもしくは少ないなどという症状も出ることがあります。これは、腎不全の症状としてよく見られるものです。急性の腎不全では、軽度なものであれば尿量が増え、重度になると尿をつくらなくなってしまうため尿量が減ります。尿の量を測定するのは、ご自宅では難しい場合が多いので判断が難しいと思いますが、いつもに比べて明らかに変化があった場合は、動物病院に行くといいと思います。

ブドウ中毒を起こした犬10匹の腎臓を調べた研究では、その全てで腎臓の一部が壊死などの障害を起こしていたと報告されています。

ただし、今述べたような症状が必ず出るというわけではありません」

Q.レーズン(干しブドウ)でも同じことが起き得るのでしょうか。

松田さん「レーズンでも起きる可能性がありますし、レーズン以外にも、ブドウの加工品全てで起こり得ます。ブドウの皮だけを食べた場合でも中毒を起こしたという話もあります」

Q.ブドウを食べると必ず中毒症状が起きるのでしょうか。それとも量によって変わるのでしょうか。

松田さん「よく分かっていないのが現状です。レーズンを1キロ食べても症状が出なかったという報告がある一方で、数粒のブドウを食べただけで中毒症状が出てしまったという報告もあります。

このことから、どんなに少量でも中毒症状が出る可能性はある、と考えるべきです。食べてしまった後、嘔吐や下痢などの症状がなくても、腎臓の検査で異常が出てくることもあります。つまり、症状がないからといって急性腎障害が起きていないわけではありません。

ちなみに2005年の報告では、ブドウ中毒を発症した場合の生存率は53%でしたが、2009年の報告では、症状が出た場合、70%ほどの生存率でした。これは、ブドウ中毒について広く知られてきたことによって、飼い主が早い段階で治療を受けさせるようになったからだと考えられます。

飼っている犬がブドウやレーズンを食べてしまったら、様子を見ずに早く病院へ行ってほしいと思います」

Q.なぜ、中毒症状が起きるのですか。

松田さん「こちらも現在のところはっきりとは分かっておらず、ブドウのどの成分が悪いのかということも分かっていません。これまでに、次のような仮説が挙がっています。

・ブドウに含まれるタンニンが動物には合わないのではないか
・カビ毒や殺虫剤によるブドウの汚染が原因ではないか
・動物種の違いによる体質の違いではないか

最近では、『ヒトとの体質の違い』が一番疑わしいと言われています」

Q.ブドウやレーズンを食べてしまった場合、どのように対処すればよいですか。

松田さん「すぐに吐かせることを検討してください。飲み込んでから、おおよそ4~6時間で胃から腸へ移動します。この時間帯に吐かせることができれば、中毒のリスクはかなり下げられると思います。自宅で吐かせることは難しいと思いますので、基本的には動物病院で適切な処置を受けてください

それ以上たってしまった場合でも、24時間ほど胃の中にブドウが停滞していたという報告もあります。夜中に飲み込んでしまい、夜間救急病院が近くにない場合でも、諦めずに、翌朝一番で病院へ行くことをお勧めします。

病院に行った後は、状況にもよりますが、点滴処置を行ったり、飲み薬を処方したりします。場合によっては入院を勧められることもあります。

何より大切なのは、食べさせないことですし、誤って食べないように注意することです。『犬にブドウは与えてはいけない』ということをぜひ知っておいてもらいたいです」

(オトナンサー編集部)

【写真4枚】犬にはNG!のブドウいろいろ

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松田唯(まつだ・ゆい)

獣医師

1987年、埼玉県生まれ。子どもの頃から動物好きで、高校時代に北海道で酪農体験をしたことなどから獣医師を目指す。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院での勤務を経て、2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代に医療の専門用語が苦手だった経験を逆手に取り、飼い主に治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して選択できる診療を心掛けている。ガイア動物病院(https://www.gaia-ah.com/)。

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