自家製梅酒の”賞味期限”は? 傷みを防ぐ「5つの条件」を専門家に聞いた
スーパーや青果店に「青梅」が並ぶ季節です。家庭で梅酒造りを楽しむ際、おいしく長く味わうために気を付けるとよいポイントについて、管理栄養士が解説します。
毎年5~6月ごろは、スーパーや青果店の店頭に並び始める「青梅」を使って、自宅で梅酒造りを楽しむ人も多いと思います。一般的な自家製の梅酒は、主に青梅とホワイトリカー(焼酎)、氷砂糖を瓶に入れて造ります。しかし、そこから半年以上熟成させること、また多くの場合は仕込んで間もなく夏を迎えることもあり、「夏場は常温でも暑いし、保存場所に悩む」「アルコール度数が高いとはいえ、自家製だと傷まないか不安」と保存状態を心配する声や、「消費期限ってあるの?」など、おいしく安全に飲めるリミットを気にする声もあります。
家庭で造った梅酒を長く楽しむために、どんなことに気を付けたらよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
Q.家庭で造る梅酒と、市販品の梅酒の違いはありますか。
岸さん「どちらも基本的な材料は変わりません。ただし、市販品は品質の劣化を防ぐための処理をしていることがあります。梅由来のポリフェノールは、梅酒中のタンパク質と結合すると、品質劣化のもととなる『澱(おり)』(沈殿物)となります。それを防ぐため、市販品はポリフェノールを吸着させる食品添加物『ポリビニルポリピロリドン(PVPP)』や、タンパク質吸着材のベントナイトを使い、除去処理を行っているようです」
Q.自家製梅酒は長期間熟成させるほどおいしくなるといわれていますが、事実でしょうか。
岸さん「事実です。梅酒の香りはさまざまな成分を含んでいますが、初めは成分の種類が比較的少なく、単純な組み合わせですが、それを熟成させることで成分の種類が増え、複雑な香りになり、マイルドな風味に変化すると考えられています。梅酒の角(かど)が取れたり、まろやかさやコク、うま味が増したりするのはそのためです。
ただし、長く貯蔵すればするほどおいしくなり続けるというものではなく、梅の爽やかな香りは徐々に薄れ、糖分が褐色になっていく変化が進めば風味も変化します。好みの問題もありますが、梅酒の熟成は2~3年貯蔵したものが最も人気があるという官能検査の報告もあります。
ただし、梅の実にはカビが生えることがまれにあり、長期間漬けておくと実が崩れて苦くなることもあります。そのため、1~2年ほどで実を取り出した方が、梅酒が長持ちする可能性が高いでしょう」
Q.自家製梅酒を長期間保存しても傷みにくいのはなぜですか。
岸さん「梅酒の材料に防腐作用があるためです。お酒のアルコールと砂糖の防腐効果、梅の殺菌作用によって長期保存が可能になります。ただし、次に挙げる5つの条件が必要です」
(1)アルコール度数ができるだけ高いお酒で漬ける(ホワイトリカー、ブランデーなど。法律上の問題からも、最低でも20度以上)
(2)砂糖の量は多いほど防腐作用が高くなるため、ある程度の量を入れる(梅1キログラムに対し300グラム以上)
(3)傷や傷みがない、鮮度のよい梅を使う
(4)漬け込む容器は消毒済みのものを使う
(5)直射日光を避け、冷暗所に置く
Q.一方で、自家製梅酒が傷んでしまったり腐ってしまったりして、飲める状態でなくなることもあるのでしょうか。
岸さん「先述の『長期保存の条件』が満たされない場合、傷んでしまうことはあります。また、梅の割合が多過ぎると、梅から果汁が出てアルコール度数が低くなる可能性があり、その場合も保存性が下がります。飲み頃になってから早めに飲み切るなら問題ありませんが、長く保存すると雑菌が増殖して濁りが出たり、カビが生えて表面に膜が張ってきたりすることがあります。においや味に少しでも『おかしい』と感じる部分があったり、明らかにおかしな浮遊物や沈殿物が見られたりする場合は、飲むのを控えた方がよいでしょう」
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