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最盛期の売り上げは年間2億円 ファミレスのレジ横でお菓子やおもちゃを売る理由

ファミリーレストランのレジの近くでは、お菓子やおもちゃが売られていることが多いです。食事をするファミレスと関係ないように思いますが、なぜでしょうか。

ファミレスでお菓子やおもちゃが売られている理由とは?
ファミレスでお菓子やおもちゃが売られている理由とは?

 ファミリーレストランでは、料金を支払うレジの近くで、お菓子やおもちゃが販売されていることが多いです。ファミレスを運営する会社の商品であれば、関連性があって納得できますが、スーパーやコンビニでも売られている一般的なお菓子やおもちゃが置かれており、必要性が分かりません。なぜ、ファミレスのレジの近くに、お菓子やおもちゃが売られているのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

1980年代から始まった

Q.レジの位置や、店の広さにもよりますが、ファミリーレストランのレジの近くに、お菓子やおもちゃが売られている光景をよく見ます。なぜ、売られているのでしょうか。

成田さん「ファミリーレストランに限らずコンビニやスーパーでも同様ですが、お客さんがレジで財布を開けているときは、購買意欲が高まっており、本当は買う予定がなかったお菓子などをつい買ってしまう『ついで買い』をしやすくなります。

また、家族連れの客が多いファミレスの場合、小さな子どもがお菓子やおもちゃを欲しがって泣き出したとき、周囲に迷惑とならないように、親がお菓子やおもちゃを必要とするときがあります。そうした、『ついで買い』や、子どもをなだめるための購入を見込んで、レジの近くでお菓子やおもちゃを販売しています。

さらに、子どもも、ファミレスに行けばお菓子やおもちゃを買ってもらえると覚えて、外出時に『ファミレスに行きたい』と親に言うようになり、来店機会のアップにつながってファミレスにとっては一石二鳥でしょう」

Q.いつごろから、どのようなきっかけで、レジの横にお菓子やおもちゃを置くようになったのでしょうか。

成田さん「幾つか説があるようですが、ファミリーレストラン全盛期の1980年代、満席のために待合席で待っている時間や、料理が来るまでの待ち時間などに、待ちきれない子どもたちのために、お菓子やおもちゃを置き始めたという話は聞いたことがあります。当時は、料理の提供に今よりも時間がかかっていました」

Q.さまざまなファミレスで売られているお菓子やおもちゃには、何か共通点はありますか。

成田さん「先述したように、お菓子やおもちゃを置く目的は元々、満席時の待ち時間や料理が提供されるまでの時間を待っていられない子どもに与えて、おとなしくしてもらうためでした。そのため、待つことが苦手な幼児から低学年の子どもをターゲットにした、あめやキャンディーなどの安価な商品が多いです。

他には、そのファミレスの親企業のPR商品や、持ち帰りが容易なもの、複数購入しても無駄なく使えそうなものなどでしょうか」

Q.多くのファミレスで、お菓子やおもちゃを置いているのは、よく売れるからだと思います。売り上げはどれくらいあるのでしょうか。

成田さん「実は、結構な売り上げになるのです。ファミレスが大ブームだった1970~1980年代には、あるチェーン店のレジ横商品の売り上げは、グループ全体で年間2億円ともいわれていました。ただし、最近は昔ほど売れていないそうです。

新たな手法として、レジ横の小スペースを委託販売の会社に貸し出し、お菓子やおもちゃの販売管理をその会社に任せて使用料だけを得ているケースが多くなっています。その方が、人材不足である昨今の外食産業にとってメリットが大きいでしょう」

Q.同じファミリー客を想定している回転すし店では、レジの近くにお菓子やおもちゃを売っている光景はほとんど見ません。なぜでしょうか。

成田さん「回転寿司の場合、席に案内されたらすぐにレーンからすしを取ることができるので、ファミレスのように、注文後しばらく待ち時間があって、子どもが退屈することがないためではないでしょうか。

チェーン店によっては、すし皿の枚数ごとにおもちゃを無料でプレゼントして、単価のアップにつなげています。また、店舗によっては完成度の高い『すしキャンディー』などをレジ横に置いている回転すし店もあるようですよ」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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