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相手を傷つける可能性も? 子どもの写真だけドーン!の「年賀状」、是か非か

子どもだけが大きく写った写真の「年賀状」が届き、困惑した経験のある人は少なくないようです。こうした年賀状を送ることの是非について、子育ての専門家が解説します。

子どもの写真ドーン、年賀状の是非は?
子どもの写真ドーン、年賀状の是非は?

 12月半ばのこの時期、「年賀状」の準備中という人も多いと思いますが、わが子だけがドーンと大きく写った写真を年賀状にして、送ろうとしている人はいませんか。一見、ほほ笑ましく見えるその年賀状、受け取る人によっては新年早々、複雑な気持ちになることがあるのです。

年賀状は「連絡手段」ではない

 元日、家庭に届く年賀状は付き合いのある親戚や友達からのものが大半でしょう。面識のある人から、家族の写真が載った年賀状をもらうと、現在の姿がよく伝わります。特に、遠く離れて過ごす祖父母にとって、なかなか会えない孫の写真が載った年賀状が届くのはうれしいものですが、その写真に写っているのが子どもだけだったら、友達の中には「子どもよりも、あなた(友達)がママになっている姿の方が見たい。ご主人の姿も見てみたい」と思う人もいるでしょう。

 私は保育園で仕事をしていましたが、園児の家族から、子どもの写真付きの年賀状を受け取ると、わずかな期間ですが、お正月休み中に会えない教え子の姿を見ることができて癒やされました。載っているのが家族写真だと「普段の送迎はママだけど、パパはこういう感じなんだ」とか、「大きいお兄さんがいることは知っていたけれど、お兄さんと○○くん、そっくりな顔をしているな」と興味津々で見ることができました。

 子どもだけの写真も悪くはありませんが、家族全員の写真の方が、受け取る側にとって、たいていの場合、うれしいものなのです。そもそも、年賀状とは、旧年中の感謝の思い、そして、新しい年も厚情を持って交流できることを願う気持ちを、新年の訪れを祝う言葉とともにしたため、元日に届くよう、はがきで送るものです。つまり、単なる「子どもが生まれました」「子どもがこんなに大きく成長しました」という連絡手段ではそもそもありません。

 子どもが生まれた年に書く年賀状であったり、幼稚園や小学校に進む節目の年に書く年賀状であったりしても、相手を思いやる気持ちを持ち、「あの人は今、何を知りたいだろう」と想像すれば、恐らく、子どもだけの写真にはならないはずです。

取引先から、見知らぬ子どもの写真

 年賀状は私生活の場だけでなく、ビジネスの場でもやりとりされます。私が会社員だった頃、取引先から届く年賀状の中に、子ども“だけ”の写真がドーンと載ったものが何枚かありました。自社の社員からの年賀状ではありません。親しく交流しているわけでもなく、子どもがいることももちろん知らない取引先の人からの年賀状です。

 文章も通り一遍の印刷文字のままで、写真についての説明や手書きのメッセージもなく、見知らぬ子どもの写真だけが自己主張していて、「どうして、これを会社宛てに送るのだろう」と驚きました。ビジネス上の意味がないのは言わずもがなですが、そこまで深い関係性ではない相手から、子どもだけの写真が大きく主張している年賀状を受け取った場合、取引先から、「非常識だ」と思われても仕方ないでしょう。

 さらに会社、しかも取引先に送るということは、その会社に所属する大勢の見知らぬ人が見るということであり、社員が100人いれば100人の目に触れる可能性があるものです。また、封筒に入っているわけではなく、写真が直接、はがきに印刷されていて、住所も書かれているわけです。受け取る側の心証もありますが、個人情報保護の観点でも、子どもの安全面でも、危険な行為だと思います。

不妊治療中に届いた年賀状に…

 子どもの写真だけの年賀状について、ここまで述べてきたこと以上にもう一つ、考えるべき点があります。一見、ほほ笑ましい子どもの写真をとても悲しい思いで見る人がいるという現実です。私は20年ほど前、不妊治療を長期間、受けていましたが、そのことは友達にも知らせていませんでした。そんなとき、お正月に友人から届く、赤ちゃんの顔だけが大きく写った年賀状はとても正視できず、傷つき、新年を過ごしました。

 現代は不妊に悩む夫婦も多いです。不妊治療を何年もしていることを知らずに、赤ちゃんだけの写真を送ってしまった場合、かつての私のように、受け取った相手が悲しい気持ちになるかもしれません。不妊治療を受けている人でなくとも、そうした年賀状を受け取ることで困惑したり、心証が悪くなったりする人もいるかもしれません。「友達だからよい」とは限らないケースもあると思います。

 今は家庭用の便利な印刷機も多く売られています。相手によって載せる写真を変えるなど、皆が明るい気持ちで新年を迎えられるよう、年賀状にもこまやかな心配りが必要なのではないでしょうか。皆さんはどうお感じになりますか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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