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傘持ち込み禁止だけど…盗まれたら“自分が悪い”と言われる店に疑問の声「店の責任では」、法的には?

傘の持ち込み禁止で、なおかつ「盗難は自己責任」というお店がSNS上で話題に。「言われた通りに傘立てに入れて、盗られたら店側の責任では」などの声が上がっていますが、法的にはどのように扱われるのでしょうか。

傘持ち込み禁止の店で盗難に遭ったら…

 SNS上で先日「傘の持ち込み禁止の店」に関するニュースが話題となりました。ニュースは、傘を入れるビニール袋を置いていない個人店で、「傘は店内に持ち込まず、傘立てに入れてください」「ただし盗難は自己責任」というお店が多いことを紹介したもので、これについて「このパターンで盗まれたことあるわ」「言われた通りに傘立てに置いたのだから、盗られたら店側の責任では」「保証してくれないからいつも持ち込んでる」など、さまざまな声が上がっています。

 こうしたケースで傘を盗まれた場合、店側の法的責任を問うことはできるのでしょうか。オトナンサー編集部では、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「寄託契約」が成立しているかどうか 

Q.ビニール袋を用意しておらず、「傘は店内に持ち込まず、傘立てに入れてください」という店で傘を盗まれた場合、店の責任を問うことはできますか。

牧野さん「店側との間に『寄託契約(物を預ける契約)』が成立していたかどうかがポイントです。たとえば、ホテルのクロークで手荷物を預けて番号札を受け取った場合、一般に寄託契約が成立しているとされます。預けた荷物がホテル側の管理が不十分で紛失したことが証明されれば、ホテル側は善良な管理者としての注意義務に違反したことになり、損害賠償責任を問える可能性が高いでしょう。しかし、今回のケースは『傘は店内に持ち込まず、傘立てに入れてください』という店側のお願いに過ぎず、寄託契約が成立しているとは言えないので、店側の責任を問うことは基本的に難しいでしょう」

Q.そのようなお店に傘を持ち込み、雨水で床が濡れてほかの客が転倒し、負傷した場合、法的責任の所在はどのようになりますか。

牧野さん「濡れた傘を持ち込んだ人は民法上の不法行為により、過失があるとして被害者の損害を賠償する責任が発生する可能性がありますが、それに加えて、施設側も工作物の保存の瑕疵(かし)を理由として、施設の管理者責任(民法717条1項)が問われることになります。裁判例でも、買い物中に濡れた床で転んでけがをしたという事故で、大阪高裁が大阪市内のコンビニに約115万円の支払いを命じています。そこで、施設側は傘入れ用のビニール袋を用意しておくことで可能な限り客に責任を転移し『施設側としては十分な注意義務を果たした』ということで自社防衛を図っているのです」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。