相次ぐ刺傷事件に恐怖…「護身術」は身につけておくべき? その現実とリスク
防犯ブザーは効果ある?
護身用品とは少々異なりますが、身を守るために持つ道具としてよく知られているのが「防犯ブザー」です。筆者は職業柄、防犯ブザーの有用性について質問されることがあります。防犯ブザーというと、小さなお子さんが持つイメージがあると思います。
防犯ブザーは周りにSOSを知らせる道具なので、それ自体に攻撃力はありませんが、大人が持っても有効なので、女性で深夜の帰宅が多い人にもおすすめできるグッズです。一方、防犯ブザーに対しては「鳴らしても意味がない」「相手が逆上しかねない」など否定的な意見もあるようです。しかし、筆者は持つだけでも意味があると考えます。
防犯ブザーを有効に使う方法の一つに「夜道ではあらかじめ握る」というものがあります。いざというときにすぐ鳴らせることはもちろんですが、手に握ることで、警戒心が立ち振る舞いに現れるのです。犯罪者は無差別に獲物を選びません。周囲を警戒している人と警戒していない人を見分けているからです。
「防犯ブザーを握る」という行動は意識を切り替えるきっかけになります。「狙われにくい人になる」ことは立派な“護身術”といえます。
日頃からシミュレーションを
そもそも、護身や防犯に100パーセントの正解はありません。想定しきれない状況の中で、模範解答を求めること自体が無理なのです。小田急線内の刺傷事件、先日の京王線内の事件、いずれの容疑者も「停車駅が少なく、犯行に適している(逃げ場が少ない)から(快速急行や特急を)選んだ」という趣旨の供述をしています。
もし、この電車に乗り合わせたとして、狭い車内で数分間も刃物から逃げることは不可能です。つまり、闘って身を守るしかありません。護身術を使う状況はいうなれば、野獣との闘いです。武器を持った相手は誰にとっても心底恐ろしいのです。そのような状況に遭遇しないように、また、最悪でも素手で立ち向かう必要のないように、可能な限り、日頃からシミュレーションするのがよいと思います。
(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)
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