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コロナ太りも? 肥満心配な愛犬の「ダイエット」、気を付けるべきことは?

犬も人間と同様、肥満が心配です。愛犬の「ダイエット」に取り組むときは、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。

犬もダイエットが必要?
犬もダイエットが必要?

 犬を飼っている人の中には、愛犬の肥満に悩む人もいるようです。犬は人とは生活習慣や食べ物が異なるため、減量は簡単ではなさそうですが、愛犬の肥満を放置すると病気につながる可能性も考えられます。愛犬の「ダイエット」に取り組むときは、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。犬が肥満になる原因や飼い主に求められる対策について、獣医師の増田国充さんに聞きました。

心臓、肝臓、関節などに負担

Q.まず、犬が「肥満」に該当するかどうかを判断する目安について教えてください。どのような基準で評価するのでしょうか。

増田さん「犬の肥満度の測定には『ボディーコンディションスコア(BCS)』という基準を使います。これは脂肪の付着具合を見た目で確認したり、実際に体を触ったりして評価する方法で、その具合によって5段階、または9段階に分けて評価しており、数字が低いほど『やせ過ぎ』、高いほど『太り過ぎ』です。従って、5段階評価の場合は『3』、9段階評価の場合『4』『5』が適正な体形を示します。

BCSを判断する目安となる肋骨(ろっこつ)や腹部の状態は環境省のホームページに『飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~』として、イラスト入りで掲載されているのでご参照ください」

Q.犬が肥満になる原因や、肥満になった場合の健康面での影響について教えてください。

増田さん「人にも当てはまりますが、体内に取り入れているエネルギーが消費している分より多い状態が続くと体内に脂肪が蓄積されていき、肥満となります。犬が肥満になる原因は運動量が少ないことと、食べる量が多いことがほとんどです。特に室内飼育で運動量が少ない場合は、消費するエネルギー量も少なくなります。また、食事を適正量以上に与えている場合や、量は適正でもおやつを日常的に与えている場合、余分なエネルギーを体内に取り込むことになり、肥満になりやすいです。

肥満になった場合、病気のリスクが高まります。心臓への負担や、栄養の貯蔵や代謝に関連する肝臓、体重増加による関節への負担などさまざまな部位に影響が及び、健康寿命の短縮につながることがあります。実際、同じ母犬から同じ日に生まれたきょうだい犬で、肥満犬と適正体重犬とを比較した場合、寿命に約2年の差が出たという報告があります」

Q.動物病院では、肥満の犬に対してどのような指導を行うのでしょうか。また、ダイエットのために飼い主が犬の食事量を極端に減らした場合、犬の体調にどのような影響を与えるのでしょうか。

増田さん「動物病院に来院する犬のうち、体重過多、あるいは肥満とされる犬は思った以上に多く、いくつかの報告をみると『太り気味』以上の割合は3割超といわれます。そのため、動物病院では、食べ物をはじめとした栄養指導を行うことがよくあります。

具体的には現状の肥満度を正確に把握し、運動量や食事摂取量から1日に必要なカロリーを算出します。それを基に『健康的な減量を行うためには、どの程度のカロリーを摂取すべきか』を計算します。多くの場合、摂取量過多で、かつ運動量が不足していることが多いので、現状の問題点がどこにあるのかを飼い主に認識してもらうことから始めるのです。

人間でも必要な栄養は取りつつ減量することが推奨されており、これは犬にも当てはまります。ところが、飼い主さんの中には『食事の回数を減らす』『既存の食べ物の量を半分にする』という極端な対策を取るケースが散見されます。極度の食事制限や絶食はかえって、栄養を体内にため込みやすくなり、減量できてもリバウンドしやすい状況を生み出す可能性があります。

減量するためには、エネルギーを消費しやすい体づくりも重要です。筋肉はエネルギー消費をよく行う部位ですので、筋力をつけることで減量効率も上げることができます。かかりつけの獣医師の指示を受け、健康的な減量を行いましょう」

Q.犬のダイエットにはキュウリが効果的だという説もあります。ダイエット期間中、他の食べ物の代わりにキュウリを食べさせても問題ないのでしょうか。

増田さん「キュウリはほとんどが水分で構成されており、ビタミンCを含んでいます。また、1本当たりのカロリーは約15カロリー、糖質量は約2グラムと低カロリーで低糖質な食べ物といえます。夏野菜の代表格であるため、暑い時期に犬に与えているという声もよく聞きます。

ただし、ダイエットと称して、今まで食べていた物をそっくりキュウリに置き換えると、カロリーの減少は期待できますが、ビタミンC以外の必要なビタミンやミネラルが不足します。そのため、かえって、体のバランスを乱す可能性があります。キュウリを食べさせてもよいのですが、キュウリだけでなくほかの食べ物もバランスよく与えて、必要なビタミンやミネラルは摂取しつつ、カロリーを減らすことを検討しましょう」

Q.犬が肥満にならないために、飼い主には日頃から、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

増田さん「医食同源といわれますが、個々に適した食べ物を取るということは健康上、非常に重要です。栄養も取り過ぎれば肥満となってしまします。注意したいのは、ほんの少しの摂取量の差が犬の体重に換算すると相当なものになってしまう点です。そのため、食事の与え方や回数、間食の有無などが肥満を左右する傾向にあります。

例えば、食事を目分量で与える飼い主さんが多いのですが、可能な限り、毎食時に計量してから与えることをおすすめします。また、食事の時間も決めておく方がよいでしょう。そうすることで、食事回数と食事量を適切にすることができます。

また、非常に重要なことですが家族全員が同一の目的意識を持って、愛犬の肥満防止に取り組むことが欠かせません。家族のうち1人だけが減量に躍起になっても他の人が漫然とおやつを愛犬に与えていた結果、成果が出ないという話をよく耳にします。犬もごはんやおやつをくれる人をしっかり見分けているので、減量を徹底するためには家族全員の協力が不可欠です」

Q.新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響で「コロナ太り」に悩む人が増えているようです。コロナ禍では、人だけでなく犬も運動不足になりやすいのでしょうか。

増田さん「生活環境や習慣が変わることで体重に変化が現れるのは、人間に限った話ではありません。特に飼い主の外出自粛により、犬が十分な散歩ができないという話を耳にします。可能な状況であれば、散歩はこれまで通り行うのが理想です。新型コロナウイルスはとりわけ、人が注意すべき感染症です。散歩中に密にならないような配慮を行いながら、できるだけ愛犬が運動不足とならないようにしたいものです」

(オトナンサー編集部)

増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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