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安室奈美恵の引退報道が過熱する理由 昭和の大スターに近い生き様と異常なメディアスクラム

スクープを奪い合うメディアと記者

 引退の反響が大きくなっている2つ目の理由は、メディアスクラムの激化。メディアスクラムの意味は、社会的関心度が高い出来事に記者が殺到し、当事者だけでなく、家族、友人、近隣住民などにも強引な取材が横行すること。1981年のロス疑惑、1997年の毒入りカレー事件などで見られた相手と場所に配慮しない取材姿勢が、2010年代後期になって再燃しているのです。

 しかも、その大半が芸能人に関するニュース。昨年から、数々の不倫、SMAPの解散騒動、小林麻央さんの闘病に関する報道が過熱し、そのたびに当事者や関係者のプライバシーが脅かされています。ネットメディアの数が増え、それを見るスマホやタブレットなどのデバイスが充実。テレビも平日の朝から夕方までニュース系情報番組が占める状態になるなど、報道が過熱する条件がそろいました。ネットでもテレビでも、以前の何倍もの芸能ニュースが流されているのです。

「スクラム」と聞くと、ガッチリ肩を組んで仲良くなるという良いイメージがありますが、このケースでは真逆。「ライバル関係にある記者たちが取材対象者を囲んでボールを奪い合う=出し抜いてスクープを取る」という悪いイメージのものにほかなりません。特に、テレビ出演せず、プライベートを話さない安室さんは、記者たちにとっては格好の標的。バラエティー番組で面白おかしく話すアーティストが多い中、ミステリアスな安室さんはニュースバリューが高いのです。

 今後は集大成となるベスト盤のリリースや、日本全国とアジア各国へのツアーなどが予定されているそうですが、良くも悪くも、記者たちの密着取材は避けられないでしょう。それでも安室さんは、これまで通り強い意志を貫き、思い描く引退を実現させるはずです。その意味で、ファンも記者も「安室さんから1年間かけて楽しめる贈り物をもらった」と言えるのではないでしょうか。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴するなど1日のテレビ視聴は20時間超(同時含む)。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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