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ゴールデン帯はゼロ なぜ、「学園ドラマ」は深夜に追いやられてしまったのか

「お茶にごす。」「顔だけ先生」「消えた初恋」…なぜ、今秋の学園ドラマは遅い時間帯に放送されているのでしょうか。

「お茶にごす。」主演の鈴木伸之さん(2019年2月、時事)
「お茶にごす。」主演の鈴木伸之さん(2019年2月、時事)

 今月7日に「お茶にごす。」(テレビ東京系)、9日に「顔だけ先生」(東海テレビ・フジテレビ系)と「消えた初恋」(テレビ朝日系)、11日に「この初恋はフィクションです」(TBS系)と秋の新作ドラマが次々にスタートしました。また、先月9日から、「古見さんは、コミュ症です。」(NHK)も放送されています。

 これらはいずれも、現在放送中の学園ドラマですが、高校生たちが中心の物語であるにもかかわらず、放送時間帯は深夜帯。かつては午後7~8時台が多く、今年のヒット作「ドラゴン桜」(TBS系)も午後9時台の放送でしたが、なぜ、今秋の学園ドラマは遅い時間帯に放送されているのでしょうか。

若年層向けはゴールデンに不向き

 学園ドラマが深夜帯に集中している理由は主に2つ。

 まず、1つ目の理由は、ゴールデンタイムでは視聴率が獲得しづらくなったから。現在、ゴールデンタイムで放送されている番組の大半はバラエティーであり、1日1~2本あるドラマも刑事や医師などの職業モノを中心に選ばれています。

 バラエティーはファミリー向けの番組が多いのに、ドラマは大人向けのものばかりであるのはなぜでしょうか。その理由は「ドラマは家族そろって見るものではなくなりつつある」から。かつてよりも、年齢や性別によって見たい作品ジャンルがハッキリ分かれるようになったことで、若年層が見たくなるような高校生がメインの学園ドラマはゴールデンタイムにフィットしづらくなったのです。

 その若年層はテレビ番組より、ネットコンテンツを見る時間帯が年を追うごとに増えています。そうなると必然的に、ゴールデンタイムのドラマは大人向けの職業モノが選ばれ、人口比率的にも少ない若年層向けの学園ドラマを放送する理由がますますなくなってしまいました。

「今年、ゴールデンタイムで放送された『ドラゴン桜』は高視聴率だったじゃないか」と思われるかもしれませんが、同作は例外中の例外。同作が放送されたのは、民放で最も長い歴史を持つドラマ枠の「日曜劇場」であり、幅広い年代の固定ファンがいます。

 さらに、物語の内容もスタンダードな学園ドラマではなく、ユニークな勉強法を紹介したり、学校をめぐる悪との戦いを交えたりなどの大人を楽しませる要素が盛り込まれていました。学園ドラマの醍醐味(だいごみ)である、若手俳優たちのフレッシュな姿だけでなく、それ以外にも、大人の視聴者層を楽しませる作品になっていたため、高視聴率を獲得できたのです。

深夜ドラマに求められる新たな役割

 2つ目の理由は、深夜ドラマの意味合いが変わってきたから。

 これまで、深夜ドラマは「深夜にしか放送できない攻めた脚本・演出」、あるいは「深夜だから許される、ゆるい世界観の作品」を中心に放送されてきました。しかし近年、日本テレビはHulu、テレビ朝日はTELASA、TBSとテレビ東京はParavi、フジテレビはFODと、民放各局系列の動画配信サービスが発達したことで、その傾向が変わっているのです。

 地上波の深夜帯で放送しているドラマは有料の動画配信サービスで先行配信するケースが多く、広告収入減に悩まされる民放各局にとっては貴重な収入源になりうるもの。特に学園ドラマにはつきもののアイドル俳優や特撮出身俳優には熱心なファンが多く、有料会員数のアップに貢献しています。

 また、TVerが若年層に浸透しつつあることも、学園ドラマが深夜帯で放送されるようになった理由の一つ。TVerをスマホで見る若年層にとって、「地上波のいつ放送しているドラマなのか」は問題ではありません。若年層は「配信なら、好きな俳優を自分のスマホで、好きな場所とタイミングで見られる」ことに価値を見いだしているのです。

 一方、テレビ局にしてみれば、深夜帯なら、必ずしも高視聴率でなくてもOK。さらに「無料の見逃し配信でも視聴数を稼ぐことで広告収入を得ていこう」という動きを進めています。実際、深夜帯のドラマが若年層を中心にしたリピート視聴によって、ゴールデンタイム以上の視聴数を稼ぐことも珍しくなくなりました。

 深夜ドラマが配信での視聴数を稼ぐことを求められるようになったことで、今後も学園ドラマはゴールデンタイムではなく、遅い時間帯を中心に放送されていくでしょう。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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