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安室奈美恵の引退報道が過熱する理由 昭和の大スターに近い生き様と異常なメディアスクラム

安室奈美恵さんの引退発表以降、その理由や今後の生活をめぐってさまざまな記事が報道されています。その過熱ぶりに、安室さんが家族やスタッフへの取材について配慮を要請する事態に。異常とも言えるメディアスクラムはどうして起きるのでしょうか。

引退発表時の公式フェイスブック

 安室奈美恵さんが1年後の引退を発表してから1週間あまり。この間、多くのメディアがさまざまな記事を報じました。引退の理由は「40歳で引退という美学を貫いた」「『劣化した』と言われるのを嫌った」「デビュー25周年と長男が来年5月で成人するという節目」などと報道されていますが、いずれも憶測にすぎません。

 さらに「音楽プロデューサーと再婚か」「引退後は京都移住へ」などと報道が過熱していることから、安室さんが公式サイトで「マスコミの皆様どうかお願いです、家族、スタッフに対する過度な取材を止めていただけないでしょうか」と配慮を求める事態になりました。

 引退の反響がここまで大きくなっているのは、主に2つの原因が考えられます。

ベストパフォーマンスへのこだわり

 1つ目は、安室さんの類まれな功績と活動スタンス。10、20、30代の各年代でミリオンセラーを達成したほか、1990年代のアムラーブームなど、記録的セールスやアイコンとしての存在感は、唯一無二のものがありました。

 それを一層輝かせているのは、音楽に向き合うストイックな活動スタンス。「ライブは歌とダンスだけで構成し、MCを挟まない」「テレビには音楽番組すら出ない」など、安室さんは「ファンにアーティストとしてのベストパフォーマンスを見せること」に専念してきました。気さくなキャラクターやトークを売りにするアーティストが多い中、ここまでのストイックさは異例です。

 また、安室さんは人気絶頂の20歳で結婚し、出産のために休業。しかし、直後に母親が殺害される事件が起き、その後も離婚を経験し、セールスが低迷するなどのつらい時期を過ごしました。そんな苦難を自力で乗り越えたことで、ファン層を拡大。昭和の大スターや世界的アーティストがそうであるように、「すべての行動が強い意志で貫かれている」「芸能活動とプライベートがリンクする」というスーパースターらしい生き様を見せることで、カリスマ性を増していきました。

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木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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