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コロナで軒並み中止 「ロックフェス」は新しい形を模索できるか

2021年開催につながる道を模索

 まず、新型コロナによるライブエンターテインメント業界の現状についてです。

 若林さんは「公演の延期・中止が始まった2月ごろは『春は必ず来る』というスローガンを発信して、4月ごろには再開できることを期待していました。しかし、世界的な流行となり、人が集まるライブは8月現在も本格始動できていません。ライブは『3密』を積極的に行うことで楽しさが増すものでしたから」と振り返り、こう続けました。

「ライブエンタメ業界の経済活動はなくなり、売り上げの90%以上を失った会社ばかりです。中でも、特殊技能を持ったエンジニアが離れていっています。音響や照明だけでなく、ステージを組むとび職の皆さんが建築現場に移り、運営でも経験豊富な人材が他の仕事に就いています。再開時に優秀な人材が戻って来てくれるか心配です」

 そんな厳しい状況の中、RSRをオンラインで行った理由を尋ねると、「音楽を止めるわけにはいきませんから」という力強い言葉が返ってきました。

「オンライン開催は半分、試験的なものでした。過去21年間のライブ映像を見ていただくことで、来年以降のRSRにつなげる狙いもありました。

『RSRはコロナに負けない』という姿勢を感じていただくとともに、RSRの『圧倒的な疲労感』、音楽に合わせて騒いで、クタクタになって石狩の朝日を見て、空っぽになったあの感じをオンラインでも再現したかったのです。ですから、開始時間も午後10時でしたし、残念ながら曇りでしたが、石狩の日の出にこだわりました。『RSRらしさ』は、オンラインでも失わなかったと思います。

無料配信には賛否両論があり、『音楽は無料ではない』というご意見も頂きました。ただ、21年間のRSRに出ていただいたアーティストをできるだけ多く紹介したかったんです。ビッグアーティストから、まだ粗削りな若手まで、『みんな音楽なんだ』と。有料化するとアーティストへの収益分配が難しくなるため、来年へ向けてのプロモーションと、今までのお客さんへの恩返しという趣旨をアーティストに説明したら、次々に快諾いただけまして、『無料で行こう!』となったわけです」

 オンラインでの開催でしたが、ファンからも関係者からもアーティストからも「よかった」と好評だったそうです。「もちろん、批判的な意見もありましたが、オンラインのRSRを見て評価くださったのですから、ありがたいです。何よりも、今年も多くの人に、RSRというフィルターを通じて音楽を届けられたことは成功だったと思います」と若林さんは手応えを感じたようです。

 とはいえ、今回はコロナ禍という異常事態の中でのオンライン開催でした。最後に、今後の音楽ライブの在り方について、若林さんの展望を聞きました。

「リアルの場でのライブが暗中模索ながら、少しずつ始まっています。開催した主催者に聞くと、お客さまから『楽しみにしていた』『運営さんも頑張ってください』といった言葉があり、ライブを待ちわびていたことが伝わってきたそうです。私も医学的なことも勉強し、世界の対応策も参考にしながら、ライブを始めていきます。コロナ前と同じ形には戻らないかもしれませんが、同質の楽しみが戻るように業界全体で努力します。

コロナにより、余暇時間の過ごし方も少人数で家族中心になり、人が集まる場所を避ける傾向になりました。こういった生活様式の変化に合わせ、新しいスタイルのライブを模索する必要があります。ステージ前に密集して、アーティストが演奏する音楽に合わせて、歌ったり声を出したり、飛び跳ねたりする形式を『正解』として来ましたが、他の『正解』を探さねばなりません。

例えば、北海道のワイナリーでの収穫祭のように、完成した新しいワインを片手に上質な生演奏を楽しむような。大会場にはない、近距離で音楽の粒立ちまで感じられる楽しみ方です。コロナ自粛でライフスタイルが変わりましたが、音楽が生活に彩りを添える存在であり、集中して聴いて主役になる存在でもあることは変わりません。音楽に触れる時間を、あと少し多くしていただけたらと思います」(若林さん)

「新しいフェスの形」探す

 ロックフェスはステージ前で密集してノリノリのお客さんもいますが、少し離れて、芝生やアウトドアチェアに座り、音楽を楽しんでいる人も大勢います。ファンというほどではないけど、生演奏を聴きたい。眠くなってまどろみながら、酔っぱらってフワフワしながら、生演奏を楽しむ。ロックフェスの特徴であるぜいたくな楽しみ方です。

 今後のフェスは密集しないで、フェスにしかできない、自由でぜいたくな楽しみ方に移行できれば、リスタートは早いかも知れません。オンラインライブは意欲的な試みではありますが、コロナ禍で苦しむ地域経済の再生のためにも、リアルの場でのフェス再開が期待されます。

(尚美学園大学准教授 江頭満正)

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江頭満正(えとう・みつまさ)

一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事を務め、音楽フェス主催事業者らが2021年3月に設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

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