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日本では喜ばれても、中国人に贈ると“タブー”として嫌われる物

日本人が当たり前に贈る品物でも、中国人にとっては、贈ってはいけないタブーとされるものがあります。

中国人に贈ってはいけないものとは…
中国人に贈ってはいけないものとは…

 中国には日本のお中元のような習慣はありませんが、「春節」や毎年秋の「中秋節」などに、仕事関係者や親戚、友人らお世話になった人に贈り物をします。しかし、中には、日本人が「どうして?」と思うようなものが、中国人に贈ってはいけないタブーの品物とされています。中国人に贈ってはいけないものとは、どのようなものでしょうか。

 日中の異文化ギャップを数多く取材している筆者が解説します。

「時計を贈る」は「みとる」

 日本はお中元の季節になりました。中国には日本と同じようなお中元の習慣はありませんが、お世話になった人に贈り物をすることはよくあります。最も有名なのは、毎年9月~10月ごろにやってくる「中秋節(日本のお月見)」のときに贈る菓子「月餅」で、仕事関係者や親戚、友人らに贈ります。

 他に贈り物をする時期といえば、「春節(旧正月)」。中国ではお茶やお酒、たばこ、フルーツなどを贈る人が多いといわれています。それ以外にも、日本人と同様、仕事関係者への手土産や、個人の記念日、誕生日などに、その人の好みに合わせた贈り物をします。

 日本人から中国人に贈り物をする機会もありますが、その際、「中国人に贈ってはいけないもの」として、中国関係のマニュアル本などによく挙げられているものがあります。「置き時計(掛け時計)」「傘」「靴」「ハンカチ」などがそれです。

 時計は中国語で「●(ジョン)」(●は「金偏に中」。日本語では「鐘」という字に相当しますが、「時計を贈る」は中国語の「送終(ソンジョン=みとる)」と同じ発音で、縁起が悪いとされているからです。

 傘(サン)は、中国語の「散(サン=バラバラになる)」などの意味に通じるため。靴(シエ)は「邪(シエ=邪気、よこしま)」と同じ音のため、贈り物として適さないといわれています。発音は関係ありませんが、ハンカチは中国では涙を拭くものであるため、中国人にプレゼントするのはタブーだといわれてきました。

 これらに加えて、「彼らのメンツがあるため、箱は大きければ大きいほどいい」「赤や金色の派手なパッケージの方が目立つので喜ばれる」ともいわれてきました。確かに、しばらく前までは、中国人は日本人以上に縁起を担ぎ、メンツを気にする人がとても多く、派手好きでこの通りだったと思いますし、今もそういう人はいます。

変わりつつある贈り物文化?

 しかし、「爆買い」ブームが去った2016年ごろを境として、贈り物文化について、少しずつ彼らの意識は変化してきたのではないかと感じています。海外旅行をして見聞を広める機会が増え、価値観が多様化し、必ずしもこれまでの常識やメンツにとらわれなくなってきたのです。

 例えば、筆者は3年ほど前、広東省でタクシーに乗った際、折りたたみ傘を車内に忘れてしまったことがありました。その話を現地の友人にしたところ、筆者が町を離れる日の朝、友人がホテルのロビーまでわざわざやってきて、新しい傘をプレゼントしてくれました。

 仰々しい箱入りなどではありませんが、袋には小さなリボンがついていて、メッセージカードも添えられていました。「この後の旅先で使ってね」と書いてあったのです。私に嫌みで傘を贈ったのではなく、私のことを思って必要なものを買ってくれたのだと思い、感動しました。

 逆のこともありました。日本の百貨店では、きれいなハンカチが売られています。日本では500円~1500円程度のハンカチを「ちょっとしたプレゼント」として誰かに差し上げる機会があります。かさばらず、実用的で、たくさん購入して配るのに重宝しますが、中国では「ちょっとしたプレゼントよりも大きなプレゼントが喜ばれる」と思っていたので、これまで中国にはあまり買っていきませんでした。

 日本の空港をたつ際、できるだけ大きな箱の菓子折りを選んでいたのです。しかし、中国に滞在中、たまたま、持参した菓子折りの数が足りず、予備として持っていた小さな包みのハンカチをプレゼントしたことがあったのですが、それが案外、とても喜ばれたのです。

「日本のドラマなどを見ていて、女性がよくきれいなハンカチを持っているのを見ていたが、中国ではこんなにきれいなハンカチはどこにも売っていないし、使うところもなかった。とても日本らしいお土産で、長く使えるのでうれしい」と言われたのです。

 それを聞いて、確かに中国では、公共のトイレでもペーパータオルが普及しているし、食事の際などに、女性がハンカチを手元に置いている姿を見ることもないが、興味がないわけではないのだと思いました。また、「ハンカチを贈ること=縁起が悪い」という従来のイメージを持たない中国人も徐々に増えており、マニュアルだけでは分からないこともあると感じさせられました。

 もちろん、地域差や年齢差、個人差もあり、一概に「中国の贈り物文化は変わった」と断言することはできません。広大な中国には、14億もの人が住んでいるのです。しかし、中国社会は日々変化しており、日本人が固定概念で想像する中国とは、少しずつ変わってきていることは確かだと思います。

(ジャーナリスト 中島恵)

中島恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学留学。中国、香港、韓国など主に東アジアの社会、ビジネス事情などについて執筆している。著書は「なぜ中国人は財布を持たないのか」「日本の『中国人』社会」「中国人は見ている。」(いずれも日本経済新聞出版社)「中国人エリートは日本をめざす」(中央公論新社)「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(プレジデント社)など多数。

コメント

2件のコメント

  1. 日本人には気付かない盲点、大変参考になります。

  2. 勉強になりました。国内でも、似たようなことがありますが、同音意義語でタブーとされるとなると、中国人への贈り物には、年齢と出生地の情報を把握した上で、気持ちのこもったものを選ばなければならないので、大変労力がかかり、パスしたいですね!