「3月休校」という政治判断は本当に正しかったのか
大学入試改革など、高等教育を中心にしたさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、政府は4月16日、緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大しました。この緊急事態宣言に関して、萩生田光一・文部科学相は同17日の記者会見で、学校を休校にするかどうかは「都道府県などの判断を尊重する」と述べました。思い起こされるのは、2月27日に安倍晋三首相が行った、全国一斉臨時休校の要請です。
安倍首相は4月17日夕方の記者会見で「全国一斉休校の判断は正しかったと思っている。あの後、多くの国々も一斉休校を行っていることからも明らかだ」と述べましたが、3月いっぱいの休校という「政治判断」は本当に正しかったと言えるのでしょうか。
新年度の授業にもしわ寄せ
安倍首相が3月2日から春休みまでの一斉休校を要請したのは、子どもたちや教職員が日常的に長時間、集まることによる感染リスクを避けるためでした。安倍首相は同20日、新学期からの学校再開に向けて具体的な方針を取りまとめるよう、萩生田文科相に指示しています。
しかし、一斉休校期間中も学校再開後も、国内の感染拡大は止まりません。クルーズ船の乗船者を含めた感染者の累計は、同25日に1000人、7都府県に緊急事態宣言を出した4月7日には5000人を突破。16日には1万人を超えています。
4月10日時点で、新学期の教育活動を開始した学校の割合は38%にとどまっています(文部科学省まとめ、見込みを含む)。7都府県の状況を見て急きょ、休校措置を取った自治体も相次いでおり、ゴールデンウイークまで休校にする学校は相当数に上るとみられます。
そうした学校では、新年度冒頭の1カ月分の授業ができなかったばかりでなく、前年度1カ月分の補充授業もしなければならなくなります。折しも、小学校では新しい学習指導要領が全面実施となり、3~6年生で英語の授業が年間35時間増えることから、しっかりと学力を付けさせるための授業時間をどうやって確保するか、さらに悩みを深めています。
専門家会議は「役割果たさず」
ところで、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は3月19日の状況分析・提言で、「学校の一斉休校だけを取り出し『まん延防止』に向けた定量的な効果を測定することは困難」としています。これでは、安倍首相の一斉休校という「政治判断」が正しかったかどうか検証することができません。
一方、4月1日の状況分析・提言では、「現時点の知見では、子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている」として、地域や生活圏ごとの状況を踏まえるよう求めています。少なくとも今のところ、新たな「知見」は示されていません。
現時点では、感染拡大防止にほとんど役立たなかったと考えられる、3月の一斉休校。4月も休校が続くことで、学校現場はますます大変な状況に置かれています。とりわけ大学を受験する高校3年生にとっては、来年1月、大学入試センター試験を衣替えして初めて実施される「大学入学共通テスト」など、新たな制度による大学入試が待っています。
本年度に十分な授業ができるのか、不安が募っています。
(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)
この記事の有用性があるのでしょうか?
進行形の今に検証する答えはあるのでしょうか?みんなが不安を抱えてるので、それを取り除く明るい前向きな論評をお願いします。
例えば『もし休校にしてなかったらどれだけのパンデミックを引き起こしたか』と逆の視点で伝えてもらうと、これで良かったんだと安心すると思うのですが。
先の事は皆が問題山積みです。あえてそこには突いて欲しくはないのが現場の意見です。
高校教員です。
こういうものは終息してからにしてください。