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「プロ野球」開幕できずで…経済損失は数千億円規模? 選手の年俸に影響は?

新型コロナウイルス感染症の拡大により、プロ野球の開幕時期が不透明になっています。もし開幕できなかった場合、経済損失はどれくらいになるのでしょうか。

プロ野球開幕予定日だった3月20日、無観客で行われた西武と日本ハムの練習試合(2020年3月、時事)
プロ野球開幕予定日だった3月20日、無観客で行われた西武と日本ハムの練習試合(2020年3月、時事)

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、プロ野球の開幕時期が不透明になっています。年間の試合数143試合を減らす構想や、無観客での試合の実施という考えもあるようですが、もし、こうした措置が取られたとき、選手の年俸にも影響があるのでしょうか。また、開幕できなかった場合、経済損失はどれくらいに上るのでしょうか。

 スポーツがもたらす経済波及効果を研究している、尚美学園大学准教授の江頭満正さんに聞きました。

経済損失5441億円の可能性も?

Q.そもそも、プロ野球各球団とリーグ全体の売り上げはどれくらいでしょうか。プロ野球の売り上げは、日本で行われる興行の中ではどれくらいの規模なのですか。

江頭さん「プロ野球12球団全てが決算の詳細を開示しているわけではないので、推定値になります。開示している球団では、東北楽天ゴールデンイーグルスは2018年シーズンの売上額が138億円、福岡ソフトバンクホークスは2019年の売上額が317億円でした。

来場者の増減と売り上げには相関関係があります。つまり、観客が多ければ売り上げも多い傾向にあるということです。この相関係数と2019年の観客動員数から推定すると、12球団合計の売上額は2100億円を少し超えるくらいと思われます。観客動員数は2653万人です。

12球団合計の売上額2100億円と観客動員数2653万人を踏まえると、プロ野球は、スポーツに限らずコンサートなどを含めても最大の興行組織といえます。映画の日本歴代興行収入ランキング(2020年4月興行通信社調べ)では、歴代1位の『千と千尋の神隠し』が308億円、2位『タイタニック』が262億円、3位『アナと雪の女王』で255億円です。

ソフトバンクは、2019年は265万人を動員し317億円を売り上げました。毎年、日本歴代1位の映画を超える売上額を記録しているのです。1試合平均3万6891人を集客し、年間72試合をホームゲームで開催。EXILEや嵐でも、年間のコンサート総動員数で200万人は超えていません。日本最大の興行組織であることは間違いありません」

Q.プロ野球の開幕時期が不透明で、年間の試合数を1球団143試合から減らす構想や、無観客での試合の実施という考えもあるようです。こうした措置が取られると、どれくらいの経済的損失が考えられますか。

江頭さん「もしも、年間で1球団100試合まで減らした場合、12球団合計の売上額は1468億円まで減少すると推計できます。ただ、これは12球団の売り上げに限った損失です。球場では、お弁当やビールなどの飲食も伴います。スタジアムに行く交通費も必要です。このような、観客がプロ野球観戦に関連して行う消費も減少します。

また、審判や映像制作スタッフ、警備員、グラウンド整備員などプロ野球を運営するための専門家も大勢います。こうした人たちが仕事の機会を失い、収入が激減する可能性もあります。そのため、球団の売上額以外の経済活動まで含めた方が実態に近づきます。

楽天は、2018年の球団の売上額が138億円、経済波及効果が217億円でした。合計で355億円の経済活動があったと考えられます。少し強引ですが、楽天の数字を参考にすると、143試合開催された場合、プロ野球全体で5441億円の経済活動があるはずが、100試合で1662億円、70試合実施で2796億円、50試合しか実施できなかった場合は3551億円の損失になります」

年俸カットは行われない?

Q.大リーグでは1995年のストライキのときに、ストライキで減少した18試合分として、全選手の年俸から約10%減額されたそうですが、日本のプロ野球においても、試合数の減少や無観客試合により、年俸が減少することは考えられますか。

江頭さん「プロ野球選手と球団の契約内容によると思います。プロ野球の契約書は開示されていませんが、日本サッカー協会選手契約書には、試合数が減少した場合の措置は記載されていません。

あくまで私見ですが、プロ野球選手には多くのファンがおり、社会的な影響力もあるため、親会社は選手の年俸をカットすることはしないと思います。逆に、プロ野球選手会が年俸の一部返上を申し出て、球団経営が危機的状況にならないように気遣う可能性があります。最近、J1・北海道コンサドーレ札幌の全28選手が、総額1億円の今シーズンの給与減俸をクラブ側に申し入れたことが報道されました。

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退が見られ、多くの労働者の所得も減少する可能性があります。そうした中で、プロ野球選手だけ試合数が減っても数億円の年俸に固執したら、ファンが失望するでしょう」

Q.仮に、新型コロナウイルスの感染が秋までに終息せず、プロ野球が今シーズン中止という最悪の状況になると、経済的損失はどうなるでしょうか。

江頭さん「今シーズンが開幕しないという最悪の状況になると、5441億円がそっくりなくなります。同時に、プロ野球を支えている専門家、球場での販売員などで正社員契約ではない多くの人が失業する危険性があります」

Q.日本には、プロ野球に関心のある人が多く存在します。一人一人は微々たる力かもしれませんが、現在の状況で少しでも経済的に応援する方法は何でしょうか。

江頭さん「プロ野球球団の経営者が発想の転換ができれば、さまざまな可能性があると思います。例えば、選手を指名した上でのスポンサーです。相撲には『タニマチ』という文化があります。力士をひいきにしてくれる客、または後援してくれる人のことです。

プロ野球の世界にもタニマチはありますので、これを誰でも簡単に参加可能にする方法があります。例えば、阪神タイガースの藤川球児選手への支援付きTシャツを1万円で販売するなどです。選手はファンに支援してもらった分、年俸を球団に返上すればどうでしょう。Tシャツは一例であり、もっとプレミアム感のあるものを提供することも考えられると思います」

(オトナンサー編集部)

江頭満正(えとう・みつまさ)

尚美学園大学准教授

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年、尚美学園大学教員となり、現在に至る。

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