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いじめ、学力低下、長時間労働…学校の問題は教員増員なしに解決しない

後を絶たない体罰やセクハラ

教員の1週間当たりの仕事時間、左端がOECD平均
教員の1週間当たりの仕事時間、左端がOECD平均

 教員による子どもへの体罰、暴言、セクハラや性犯罪などが後を絶ちません。

 しかし、教室という閉ざされた空間で、大人1人が多くの子どもたちと接している状況では、決して解決しません。なぜなら、先生と子どもとの間に圧倒的な力の差がある中で、言葉は悪いですが「教員のやりたい放題」になってしまうからです。

 教員によるハラスメントを解決する一番、かつ唯一の方法が複数担任制です。1つの教室に常に2人以上の先生がいる状態にすれば、大人の目がありますので、めったなことはできないわけです。そして、複数担任制は学力の向上にも役立ちます。

 実際、欧米の先進各国では複数担任制が増えています。例えば、フィンランドは少人数学級でありながら、複数担任制でもあります。さらに、授業中にはアシスタント教員(AT)が入り、子どもへの個別な指導も行います。

 そのおかげもあって、フィンランドはPISA(OECD生徒の学習到達度調査)において常に上位を維持しています。そして、学級崩壊もほとんど起こらないそうです。

 現在の日本の教員の仕事量の多さは、限界を超えています。2018年のOECD国際教員指導環境調査(TALIS)によると、日本の教員の労働時間は国際平均を大幅に上回っています。

 例えば、中学校の教員の1週間の仕事時間は、OECDの平均が38.3時間なのに対して、日本は56.0時間です。また、一般的な事務作業の時間は、OECD平均2.7時間なのに対して、日本は5.6時間にもなります。いずれも驚くべき数字であり、もはや異常と形容される状態です。

 この解決のためには、仕事の精選と同時に教員の増員が不可欠です。

(教育評論家 親野智可等)

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親野智可等(おやの・ちから)

教育評論家

長年の教師経験をもとにブログ「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」、ツイッターなどで発信中。「『自分でグングン伸びる子』が育つ親の習慣」(PHP文庫)など、ベストセラー多数。全国各地の小・中・高校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。公式サイト「親力」で新書3冊分のコラムが閲覧可能。公式サイト「親力」(http://www.oyaryoku.jp/)、ツイッター(https://twitter.com/oyanochikara)、ブログ「親力講座」(http://oyaryoku.blog.jp/)。

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