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改正健康増進法施行へ 飲食店の「喫煙」厳しく制限、何がどう変わる?

改正健康増進法が4月1日に全面施行され、飲食店内などでの喫煙が厳しく制限されますが、東京都などは法律以上の厳しい規制をするそうです。

「禁煙」の範囲どこまで広がる?
「禁煙」の範囲どこまで広がる?

 改正健康増進法が4月1日に全面施行され、飲食店内などでの喫煙が厳しく制限されます。自治体によっては法律以上に厳しい規制を設けるところもあり、東京都も厳しい規制をするそうです。どのように変わるのか、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「たばこのない五輪」背景に

Q.そもそもなぜ、飲食店内などでの喫煙が厳しく規制されるのでしょうか。

牧野さん「東京五輪・パラリンピックの開催が2020年夏に予定されており、国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が『たばこのない五輪』を求めている事情があります。

数年前には、議員立法で『受動喫煙防止法』の成立を目指す動きもありましたが、今回は『健康増進法』の改正で対応しようというもので、多くの人が利用する場所での受動喫煙防止に向けた対策強化を目的としています」

Q.改正健康増進法の全面施行によって、飲食店での喫煙がどのように規制されるのか教えてください。まず、全国一律の規制部分をお願いします。

牧野さん「2020年4月1日の全面施行により、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等の施設において、『屋内』は原則禁煙となります。違反すると『過料』の対象となることもあります。

ただし、(1)喫煙専用室(飲食物の提供は不可)の設置ができる場合は、専用室内でのみ喫煙可能(2)加熱式たばこ専用喫煙室が設けられる場合は、室内で加熱式たばこのみ使用でき、飲食物の提供も可能(3)シガーバーなど喫煙を主目的とする施設については、受動喫煙防止の設備基準を満たしていれば『喫煙目的室』を設けることができ、その室内では喫煙、飲食ともに可能――という例外があります。

また、既存の経営規模の小さな飲食店については、事業継続に影響を与えることが考えられることから、経過措置として『喫煙可能室』(『喫煙専用室』ではなく、喫煙、飲食ともに可能)の設置を可能としています。

この条件を満たすためには、(1)2020年4月1日時点で営業している飲食店であること(2)資本金5000万円以下であること(3)客席面積100平方メートル以下であること――の3つの条件をいずれも満たす必要があります。

なお、20歳未満の人は客も従業員も喫煙エリアに入ることはできません。つまり、喫煙可能室があったとしても、20歳未満のアルバイト店員がそこに料理や飲み物を出すことは不可能になります。ちなみに、飲食店ではありませんが、旅館・ホテルの客室など『人の居住の用に供する場所』も、喫煙禁止場所としないという例外扱いがあります」

Q.東京都は法律より厳しい規制があるとのことですが、どのようになるのでしょうか。

牧野さん「改正健康増進法では、先述したように客席面積100平方メートル以下で、資本金5000万円以下の店は規制対象外ですが、都条例では『従業員を使用しない』事業以外は規制対象になります。

例えば、従業員を雇用しない、家族だけで経営する要件を満たす飲食店は、飲食も可能な喫煙可能室の設置が可能ですが、アルバイトなどを雇っている場合は、喫煙可能室は設置できません。

また、飲食店以外も厳しい規制があります。小学校、中学校、高等学校、保育所、幼稚園について、改正健康増進法では『敷地内の屋外に喫煙場所の設置』が可能ですが、都条例では、敷地内の屋外でも喫煙場所の設置は不可となっています」

Q.都内はどの程度の店が禁煙になるのでしょうか。

牧野さん「都条例の骨子案が示された2018年4月時点の見通しですが、およそ84%の飲食店が規制対象になるとの見解を都が示していました」

Q.例外扱いに該当させるため、駆け込みで資本金の減資や客席面積の縮小、従業員の解雇などをする動きはあるのですか。

牧野さん「動きはあると思います。ただ、正確な実態は把握しておりません」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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