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おっさんずラブを超えて時代を癒やす、田中圭と林遣都の俳「優」力

“ジェンダー”の描き方に最適な解答

 さて、そんな林さんと「おっさんずラブ」でカップルになったのが、田中圭さんです。こちらも、公開中の主演映画「mellow」でフェミニンな優しさを見せています。

 役どころは、生花店の店主。めいからは「どうして男なのに花屋になったの?」と聞かれたりしています。そんな彼が、岡崎紗絵さん扮(ふん)するラーメン店の店主と恋をするわけです。きゃしゃな腕でフライパンを振る女性と、丁寧に花を手入れする男性というコントラストが、今どき好みのギャップ感をすてきに醸し出していました。

 また、田中さんが人妻に思いを寄せられ、その夫にキレられる場面では、彼独特の困っているときのかわいらしさが発揮されていたものです。これもある意味、「おっさんずラブ」によって発見された魅力でしょう。

 とはいえ、根は男っぽい人だと思います。1月10日に出演した「あさイチ」(NHK総合)でも、同じ事務所の小栗旬さんや綾野剛さんへのライバル意識から、「主役がやりたい」と社長に直談判したエピソードが紹介されていました。

 小栗さんに「お前、いつになったら売れるんだよ」などといじられたりするうち、

「じゃあ、同じところで一回勝負させてくれっていうような思いがいろいろたまって」

 とのこと。社長には「ドラマを通して、田中圭が何者かを知らしめなさい」とアドバイスされたそうで、その取り組みが今のポジションにつながったわけです。

 一方、林さんにはカメレオン俳優的なところがあります。つまり、フェミニンなキャラは引き出しの一つにすぎず、昔から実に多彩な役をこなしてきました。「スカーレット」もそうですが、1月4日放送のドラマ「教場」前編(フジテレビ系)でも、運動神経抜群な一面を見事にカムフラージュしていたものです。

 ただ注目したいのは、数ある引き出しの中のフェミニンなところが今の時代に求められていることです。「男らしさ」「女らしさ」というジェンダーをどう描くのかがここ数年、特に重要視されていて、ドラマや映画の作り手も模索中だということが関係しています。

 そんな中、林さんや田中さんはちょうどいい答えをきちんと出してくれる役者だと認められ、頼りにされているのです。

 そういえば、「草食男子」という言葉が流行した後、草食と肉食のいいとこ取りをしたような「ロールキャベツ男子」という言葉が生まれました。林さんと田中さんはその概念をリアル化した存在であり、だからこそ、多くの女性が癒やされるのでしょう。

 ちなみに、俳優という言葉の「俳」と「優」は共に「芸」を意味するようです。ただ、現代においては、「優」からイメージされる優しさが大事になってきた気がします。田中さんや林さんのように、時代に合った優しさを自然に感じさせることが「俳優力」の決め手なのです。

(作家・芸能評論家 宝泉薫)

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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